曲者たち

色鉛筆 仕事
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 新しいパートで、研修もし、やっと本業の営業事務的な仕事を教わることになった。
そして私が担当することになる営業マン。こいつが曲者。本当についてない。
彼の仕事をサポートするようで、別のパートさんが元は担当していたのだけれど、結婚することになり退職の流れ。で、その穴埋めに私というわけだ。

「タッキー、ちょっとこれどうなってるか調べてみて!」

「えー、今ぁ?」

 そんなフランクなやり取りをしている2人。そしてそのタッキーさんは可愛らしい人で、ちょっとぽっちゃり気味だけれど、顔面偏差値が高くて小柄。そして更に声が愛くるしい。もてるだろうし、本人もそれを自覚している感じ。


「今度、私の代わりに桜井さんのサポートしてくれる芝生さん。」

「芝生と申します。よろしくお願いいたします。」

「よろしくおねがいしまーす。」

 気の無い返事。桜井という男は顔はキューピーのようで、大柄で腹がでっぷりしている。だが、ちょっとしたことで苛ついて顔を真っ赤にし、後輩を怒鳴りつけていたりするのを見てしまってから、いつその矛先が私に向かうのかと思うと心臓がバクバクするのだ。

「じゃあ、これ桜井さん担当の顧客分、このリスト見てスタートセット送付して下さい。ただこれ、この赤字の家には絶対送らないで。」

 件数はそこまで多くないけれど、赤字部分は絶対送るなと言われたので慎重になる。
時間は迫り、配送会社の最終便に間に合わせないとならないので焦る。なんとか間に合った。
控えの伝票を整理し、ファイリングしようといたら、タッキーさんのチェックが入った。

「あ!この人は駄目です。」

「え。でも赤字じゃなかったので・・」

「いや、あー、桜井さんが見落としたのかな。」

 なにがどうなっているのか?私は間違っていない。
だが私達のやり取りが聞こえたのか、桜井がこっちにやって来て、大きな声で怒鳴り出した。

「おいおいおい!!困るよ!ちょっとそこに送られたら即クレームだから!!ったく!!」

 顔を真っ赤にし、吐き捨てるかのように言い放つ。勿論、彼の視線はタッキーさんではなく私。私のミスだと思っている。彼のミス?なのかもしれないのに。だが、タッキーさんはそこで何も言わず、曖昧に苦笑い。そして、

「ごめんね、桜井さん。まだちょっと慣れてないみたいで。私の教え方が悪かったみたい・・気を付けるね。」

ーえ?なんでそうなる!?これは私を庇っているようにも聞こえるし、そして彼のミスを指摘せずスルーしているので、やっぱりどうしたって私がミスをしたようにも聞こえる。ミスした新人を庇う優しい私の裏側で、実はそんなことは一ミリも思っていない癖に、そんな偽善ポーズで彼の同情を買う。


「タッキーは悪くないよ~。まあ、さっき宅配出たばっかなら配送キャンセル出来るよね?」

「うん!電話しておくから大丈夫。ごめんね~」

 唖然とする私を前に、2人のやり取りは終わる。タッキーさんはすぐに配送業者に電話をかけ、伝票番号を伝えて配送ストップをかける。そして大きなため息。

「はぁ~、焦った。桜井さん、あんな人だけど悪い人じゃないから。」

ーえ?何?やっぱり私が悪いことになっているの?っていうか、まず私のミスではないことを彼女の口から聞きたかった。だが実際に聞き返す勇気はなく、ただ頭を下げるしかなかった。理不尽過ぎる。

 タッキーさんは29歳らしい。元は社員だったようだが、結婚が決まってからパートに切り替えて結婚準備に勤しんでいると言う。私より20歳程年下。米田さんより年下。仕方がない。そう思い込むことでなんとか自分の精神を保とうとしたけれど、苛々が止まらない。
そしてあの桜井だって、ただ可愛かった女の子のサポートからおばさんサポートに変わることに私同様、苛ついているのかもしれない。

 あっという間に週末。
週1程度の仕事からダブルワークになり、息をつく間もない。

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