きっと、彼女は子どもの頃からお姫様だったのかなと思う。
花山さんがそこにいるだけでぱぁっと華やぐ。
仕事も出来るし、そうでなくてもきっと誰からも好かれる存在なのかも。
相変わらず私のミスは指摘してくるけれど、しょうがないなーといった感じで二人勤務の時は、私がさばけない業務をまるっと引き取ってくれる。
だから、一人の時よりも楽が出来ている事実。
彼女の言動に、もやっとすることが無いといったらウソになるけれど。それでも出来の悪い同期をサポートしてくれるのだから、面倒見が良く有難い存在だ。
「もう~、部長!昨日伝えたじゃないですかぁ~」
ようやく試用期間を過ぎたのに、上司にボディタッチまでする彼女。ちょっと馴れ馴れしい気もするけれど、仕事は完璧だし見た目も可愛らしい人なので男性社員は鼻の下を伸ばしている。
お局の米田さんや木佐貫さんとも彼女はうまくやっており、ランチは相変わらず楽しそうに同行しているし、仕事も彼女達がバタバタしていれば先回りしてうまいこと片付けるから感謝される。
「え?やっててくれてたの!?これ全部!?すごい!ありがとう!!」
米田さんの心の底からの感謝の声に、嘘偽りはない。
そんな彼女だから、仕事中のちょっとした雑談も、社員達から振られたりして。
とにかく楽しそうにやっているのだ。
近頃は、社員だけではなく外部の取引先とも電話で冗談なんか言い合ったりしている。
隣にいて、受話器越しにも聞こえる取引先の笑い声。
水を得た魚のように、その環境にすっと馴染み適応出来る能力。
それに長けている彼女は、きっと物心ついた頃から愛されキャラなのだろう。
自己肯定感が高いから、前提に拒絶されるかもーなんてネガティブな想像が働かない。
だから思うままに発言し、行動し、人の顔色をいちいち見ないその裏表のなさが人を惹き付けるのかもしれない。
あんな風に振舞えたらいいなーなんて。
10年前から変わらない。
引っ越し前のママや素敵ママ、それにYさんに対しての羨望に似た気持ちを思い出す。
そしてどんなに願っても私は私なのだけれど。