コールセンターのパートだが、なかなかアポが取れない。
大抵、担当のものは終日不在ですーと返される。
それでもリストを元に、また日を改めて掛け直しますと締めくくる。
私の仕事は、とにかくアポを取ること。
それが決まれば、後は営業が商談へ行き、うまくいけば契約成立ーという流れ。
「申し訳ありませんが、本日担当の者は終日不在とさせていただいております。」
「先程、外出いたしまして・・戻り予定はございませんのでまたタイミングを見ていただいて・・」
「担当の者は、社外に出ていることが多いので申し訳ありません。」
アポ以前ー、取り次ぎすら受けて貰えない。
門前払いというやつだ。
それでもひたすら掛け続ける。
相手も法人なので、会社の窓口という役割を担っているのだろう。
一般の人間に掛けたらガチャ切りされたり怒鳴られたりするだろうテレアポの仕事だが、彼らは実に丁寧に優しく対応してくれる。
だから、メンタル的にまだ病まずにいられるのかもしれない。
「申し訳ございません。弊社では既に他社と契約を結んでおりますのでご期待に添えないかと思います。」
ようやく取り次いで貰えても、極まり文句のように返される台詞。
何度も何度も電話を掛け、それでも成果に繋がらない。
誰がやったって同じだよーと思いながらも、決める人は決める。それがコルセンの世界。
「1件、アポ取れました!!」
「おめでとうございます!」
拍手喝采。
そんなポジティブな空気が社内中に充満すれば、私のように決まらない人間の居場所は無くなりつつある。
例のおじいさんー、すっかり名前を覚えてしまった彼だが、彼がアポを取った法人での契約が決まり、それによって100万以上の利益が生まれた。
私よりも後に入社したというのに、来月から時給も上がりインセンティブも貰えるのだ。
一件あたり、契約が決まれば法人相手なので莫大な利益が生まれる。
会社にとって、利益を生む人間は宝だ。だからこそ、他と差別化をはからなくてはならない。
何度も同じ台詞を言い、同じ台詞を返される日々。
相手側も、仕事の手を止められ、内心うんざりしていることだろう。
楽な仕事なんて、無い。