散歩をしていたら、つくしが沢山生えている場所を見付けた。
物価高で野菜を買うのも控えるこの頃、お宝を見付けた気分。
いったん自宅に戻り、ビニール袋と水筒を持って、いざ収穫。
帽子を目深に被り、無心になって採る。
なんだか楽しい。
子どもの頃、近所の友達とつくしを採って家に持って帰ったら、母に嫌な顔をされた。
「美味しくないわよ、つくしなんて。」
子ども心に、それでも料理して欲しかった。
美味しい不味いではなく、子どもが採って来たものを料理して食卓に出すことー不味いのだって経験だし思い出になる。
つくしの卵とじ、天ぷら、それにおやつにトースターで焼いて砂糖をまぶしたものも美味しいらしい。
はかまを取って、あく抜きしてー、その面倒な作業もいまや時間がたっぷりある日中の暇つぶしにもってこいだ。
これで一食分浮くのだから、ある意味バイトをしている感じ。
すっかり手先が真っ黒になったところで、うっかり手袋をせず下拵えをしていたことに気付く。
週明けのパートまでにこの汚れが落ちるだろうか。
こんなに真っ黒な指先で書類の手渡しなんてしたらどう思われるかーいや、どう思われたっていいやと流す。
夕食にそれを出すと、夫は食わず嫌いで顔をしかめたが、渋々それを食べると案外パクパクと箸が止まらない。
「美容にもいいんだって。」
子に伝えると、美肌に気遣うお年頃ということもあり天ぷらに手を伸ばす。
春の味覚は何も菜の花や筍ばかりじゃない。
無料で季節を味わうことだって出来るのだ。