虚無感

風呂場 わたし
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 体調不良が続いている。
更年期なのか体温も無駄に高く倦怠感がひどい。
何もやる気がせず、気付けばソファーでスマホ。
あっという間に夕方、子が帰宅。

「ママ、具合悪いの!?」

 辛うじて洗濯はしたが、それ以外は何もしていなかった。
食器洗いも掃除も。
部屋のあちこちに、ほこりと髪の毛が絡まったものがわんさか。
これを全部集めたら、ちょっとしたホラーだ。

数日前から虚無感に苛まれている。

 ずっとやろうと思っているところの掃除ー例えば、風呂場。
ピンクと黒、二色のカビが同居している。
大雨の翌日の特に蒸し暑い湿気たっぷりの日には、なぜか排水溝から湧いて来る小さな虫たち。それが何匹も舞っており、気持ち悪い。掃除をするしない関わらず、この小さな虫は定期的にやって来る。
シャワーを浴びれば居なくなるので、見てみない振りをしている。
築何十年の古い賃貸だから、越してきた頃から黒カビはあったし、これでクリーニングしたの?と思うような古くて汚い風呂場だったけれど、あれから10年以上経って、きっとあの頃の自分が見たらドン引きするだろう汚さ。
なのに、私だけでなく夫も子も、毎日入っている風呂なので、気付かない。徐々に汚れることに関して人は鈍感だ。

バルコニーも、汚い。たまったダンボールや厚紙をまとめなくてはと思いながらも、いざ出そうと思うと回収日は過ぎており、じゃあ次の回収日までにと思うとまたそれも過ぎる。
延ばし延ばしでこんなに暑くなってしまった。

あれもこれも、こうしなければという気持ちに反し、どうせやったところで現実は何も変わりやしないと投げやりな気持ちになる。
どうせすぐに汚くなるし、やっても新品同様にはならないし、そもそも元から古くて汚い部屋だったのだから現状維持を保ったとしてもたかが知れている。
狭い部屋に引っ越した実家の方がまだ綺麗なのだ。
買った家でもないから愛着も湧かない、いずれ出て行くだろうと粗末に扱っていたのに、結局そうならないままここまで来てしまった。
私はこの汚くて古い賃貸で一生を過ごすのだろうか。


 一人でいる間、ずっとネガティブなことばかり考えていた。
この世に生を受けた時から、自分を生かさなくてはならなかった。
親に見捨てられたら生きていけないから、媚を売り、聞き分けの良い子になって。
私が成長するに従って、親は段々と期待を捨てていった。それはもう、あからさまに。
小学校までは、中学受験させるくらいの教育ママだった母は、高3になる頃にはすっかり私への興味を失くし、自分を認めてくれるパートという小さな世界に居場所を見付け、ずぶずぶにはまっていった。
いい具合に干渉されなくなった私は、結局、怠けた。
努力する能力も才能もなかったから、せめてもの思いでお金のかからない2年制の短大に入った。そこで、銀行や大手企業の一般職で推薦枠が取れるよう頑張れたらまた違った人生だったのに。
馬鹿な私は、そこでも可もなく不可もない学生生活を送り、なんの資格も取らず、中途半端に学歴つけて結局は非正規雇用。
その後の人生を考えたら、到底自分の経済力じゃ生きていけないものだから、好きでもない夫と結婚した。その結果が、今だ。
我が子と出会えたことは、この人生でかけがえのない出来事だけれど、彼女がこの家を出て自立したら、その先に何が残るのだろう。
また、自分を生かす為に夫に媚びを売り、聞き分けの良い妻になり生きて行くのかと思うと、虚無感しかない。
自分以外の何かの為に生きることー、綺麗ごとだと思っていたけど、それこそが生き甲斐なんだと最近思う。




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