昔から、体育会系の人が苦手。
自分とは対極の人だからというのもあるけれど、その思考・それ系の人達が持つ威圧的な空気が怖い。
事務パート、出勤日。木佐貫さんはお子さんの体調不良で休み、花山さんは美容休暇で不在の中、私と黒川さん、そして米田さんの3人が事務作業を集中してこなしていた。
黒川さんは、米田さんと席が近いこともあり、最近では仕事以外の会話をしていることがある。
それも、米田さんの方から雑談を振っているのだ。
黒川さんは、比較的黙々と仕事をするタイプではあるが、社員の米田さんから話し掛けられれば、忙しくても手を止めない程度にそれに呼応する。それはもう感じ良く。
「黒ちゃんは、学生時代は何部だったの?」
「バレーです。」
「やっぱり、そんな感じ。私もだよ。ポジションは?」
「レフトです。米田さんは?」
「セッターだったよ。黒ちゃん、背、そこまで高くないのにすごいね。まだ続けてるの?」
楽しそうな会話が聞こえてくる。黒川さんも自分の好きなことの話題なのでいつもより楽しそう。
勝手に私と彼女が同じ種類の人間かもーなんて思っていたのだけれど、そうではなかった。
彼女は生粋の体育会系で、それが見る人によってはにじみ出ているのだろう。だからバリバリ体育会系の米田さんに好かれるのだ。
上下関係に厳しい世界、先輩らに対する礼儀正しさ、ウジウジ悩まない行動派。そして忍耐力も兼ね備えている。
既に昔から植え付けられていた性質は、社会に出たら尚のことプラスに働くことがある。体育会系出身というだけで、どんなに見た目が物静かであっても途端に「陽」の空気をまとうのだから、学生時代に所属していた部活はその人のキャラクターを形作る要素となる。
我が子が高校で部活を辞めてしまったことを、勝手ながらも勿体なく思うのだ。
「ママ友から、ママさんバレー誘われてるんだけどね。とてもじゃないけど今は無理。いつかやれたらいいけど。」
「いいじゃないですか!それか、お子さんにやらせるとか。」
「もうやらせてるよ。辞めたいっていつも泣いてるけどね。」
体育会系の母親を持つ彼女の子どもを気の毒に思う。
泣く程なのに辞めさせてもらえないのか・・
彼女は子どもにすら厳しいのだと分かり、そりゃあパートの出来ないオバサンに風当りが強いのも仕方のないことなのだと思える。
バレー部か・・
もうその情報だけで、やっぱり米田さんに苦手意識を持ってしまった。
更に、黒川さんに対しても。
体育会系
