衝動的に、退職願を書いた。
それを通勤バッグにお守りのように持ち歩く日々。
中山さんー例のチャット指示を鬼のように出してくる男性社員から、再び仕事を振られることになると聞いた昨日。
小川さんのように隣の席で懇切丁寧に説明してくれるでもなく、経過を見てくれるわけでもない彼。
チャットで一方的にバーッと説明をし、その時点で質問を求められ、後は放置。
説明もよく理解していないのに、的確な質問なんて出来ない。
分からないことは、作業に取り掛かってから出て来るのに。
実際の作業は月曜からなのに、既に気持ちが落ちている。
共有のスプレッドシートが早速出来ていて、どんな作業をするかの説明はまだなのに、それをうっかり開いてしまうと中山さんもそれを開いている最中で、それだけで動悸がし、めまいを起こしそうになった。
すぐにシートを閉じて、深呼吸。
「大丈夫ですか?」
小川さんに心配される程だった。
そんな憂鬱感を常に抱いている私をよそに、
「もうすぐ試用期間も終わりますね。あと一週間、頑張って下さいね。」
そう言って、小さなチョコレートを一粒くれた。
こんなに優しい人がいるから、なんとかここまで続けて来られたのかも。
でも、これからは彼女から振られる仕事だけではなく、中山さんをはじめ、その他の社員からバンバン仕事を振られることになるらしい。
勿論、彼らからすれば雑用のような簡単な仕事ー専門性といっても、その入り口的なものなのでネットでググれば説明なくても出来るでしょ?的な作業が殆どなのだろうけれど。
昨日は、小川さんから振られた仕事も少なく、ほぼ半日はシュレッダーをかけていた。
パートの私は、こんな仕事で十分。
ぼーっと突っ立って、山のように積まれた機密情報満載の書類を片付ける。
フロア内の隅っこで、そこが落ち着く。
ガラス戸の向こうでは、社員達がPCに向かい黙々と作業をしている。
頭をからっぽにしたくても、すぐに余計な雑念が入る。
静かな職場ー、電話の音とキーボードを叩く音。
シュレッダーの音がうるさいのではないか?と不安に陥る。
とにかく、気にし過ぎはよくない。
来週からのことは来週になってから考えよう。
いざとなったら、退職しよう。
憧れのオフィスワーク、ここで手放したら二度と手に入れることは出来ないだろうと思う。
でも、心も体も限界になる前に、自分を守れるのは、自分自身だ。