BABY

赤ちゃん わたし
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 ゴミ出しに出た朝、エントランスに幼稚園の親子連れがたくさんたむろしていた。
軽く会釈など必要のないくらい、彼らと私とは接点が無い。それが気楽。
ふっと目を遣ると、以前気になっていた親子の姿。
遥か昔の私と子のように、ぽつんと2人きりで佇んでいたことを思い出す。
やはり、群れから少し外れたところで子どもを見ている。

ーん?

 しかし、母親の姿に胸がドキリ。
抱っこ紐をしており、その中に新生児と思われる赤ちゃんがいたのだ。
いつ妊娠して出産したのかも分からないけれど、私が最後に彼女達を見た時はそんな兆候など無かった気がするから、あれからだいぶ時が経ったことを実感した。
なぜだかふいに、思わぬ感情が湧いた。あの時は、心の中で頑張れーと素直に思っていた私なのに、胸の奥にチクりと待ち針を刺されたように気が沈んだ。

園のバスが到着し、子ども達がぞろぞろと乗り込む。彼女の子も走り去る。それを追いかけるように、バスの近くへ行くと、群れがっていた他のママ達が彼女の抱っこ紐の中にいる赤ちゃんに話し掛けた。

「本当、すぐ終わっちゃうよねー、新生児って。」

「可愛い。見てよ~この手!」

 それぞれの子ども達をバスを見送った後は、彼女中心に輪が出来ており、赤ちゃんを抱っこしながら微笑む彼女は皆に囲まれそれはもう幸福そうだった。

 自宅に戻り、忘れ掛けていたこの薄暗い感情に心を持って行かれそうになる。
どんなに一人っ子で良かったと自分に暗示を掛けたところで、本音は違うのだ。
このモヤモヤは、一生ついて回るのか。

 

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