美容休暇

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 花山さんが、また有給の申請を出した。
私と交代ではなく、有給。
なぜならば、丸々2週間休むというからだ。その間、彼女の出る日数は5日間。それをすべて有給に充てるというのだ。

米田さんや木佐貫さんは、なぜ休むのか聞きたい風だったが、彼女はのらりくらり。
家庭の事情と言い、それ以上は踏み込ませないような空気を作っていた。

正社員らが打ち合わせに出ると、パートだけの空間。言い換えれば、花山さんの休み時間。
そして今日は、黒川さんは休みなので私と二人きり。
遠慮なく、ベラベラ私に話し掛ける彼女。


「実はね、友達に紹介してもらったクリニックでリフトアップするんだ。」


 そう言って、顎のラインを触る彼女。
ヘアスタイルやネイル、日々のファッションで美意識が高いのは知っていたが、整形までとは・・
綺麗にしていても、やっぱり黒川さんと並べば年齢は誤魔化せない。
私と比べれば十分若いけれど、そういうことじゃないのだろう。


「ダウンタイムは家で過ごしたいしね。さすがに腫れてる顔でここ来たらみんな驚くでしょ?」


「そのままで十分綺麗なのに。」


 彼女が喜びそうな言葉を掛ける。
だが本心でもそう思っていた。アラフィフにしては、十分綺麗だと。


「いやいや、やめてよー。息子の彼女と並んで歩くのが恥ずかしくって。一緒にお買い物とかお茶とかいずれしたいけど、こんなおばさんと一緒なのは可哀想でしょ?」


 息子の彼女に対抗していたのかー
驚くと同時に、そのバイタリティに感心すらおぼえる。
てっきり黒川さんを意識しているのかと思っていたから。


「パート代、来月分、前借したいわ~」


 いったいその糸リフトやらにいくら掛かるのか、聞いてみたら本数で決まるらしく、軽く10万は掛かると言う。
パート代は全額小遣い、そんなことを言っていた彼女が純粋に羨ましいけれど。
若返ってどうするのか、その分、NISAや貯金をした方がよっぽど有益なのにと、余計なお世話だが思ってしまう。




 


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