ブラック自営

石 生活
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 ここずっと、夫が休みなく働いている。
犬塚さんと揉めている。
彼はこの自営をするにあたって必要な資格保持者であり、そういった意味で仕事によって、取り分が夫より多くなる時がある。
何もせずにただ立ち合いだけしてその他の面倒な業務は押し付けておいてそれはないだろうと。
食欲不振だったりしていたあの時期、恐らく揉めていたのだろう。
文句があるなら別の事務所にうつってもいいと啖呵を切られたらしい。
そう言われたら、ぐうの音も出ない。彼は切り札を持っている。夫より優位な立場なのだ。
その力関係を崩す為にも、今年こそ資格試験に合格しなくてはならない。
なので、その為の勉強もしなくてはならず、仕事休みの日はそれに大半の時間を充てている。
スクールも、新年度になり去年よりレベルアップしたクラスで受講をしているようで、金も掛かる。
多くのプレッシャーがのしかかっている状況の中、恐る恐る収益はどうなっているのか聞いてみた。
まさか、借金なんてないよね?と。
夫は大丈夫だと言うけれど、正直、信用出来ない。
ただ、この手の質問をすれば、私の仕事探しはどうなっているのかの質問返しが始まるのだ。


「派遣に登録でもしたらいいんじゃないか?その方が時給もいいだろう?」

 なんとなく、派遣は怖い。
直接雇用にこだわる私に夫はうんざりした顔で、


「花子だってもうすぐ大学だろう?まとまった金、準備しないと。」


 明らかになるのが怖く、グレーな状態にしていた事項。
やっぱり。
子の教育資金に手を付けた?私が以前確認した時は、子ども専用の貯金はいくらかあったはずなのに。
それでも全然足りなかったのに。


「まあ、いざとなればー」


 夫は義両親に借りるつもりなのだ。
実は、開業資金も義実家にいくらか用立ててもらっている。その額はーここではとても言えないけれど、大きな借りが出来ている事実。
可愛い孫の為、頼めば義両親は何とかしてくれるかもーという甘い考えに私も心が揺らぎそうになったけれど、ふと義姉らの顔が浮かぶのだ。
タダでは済まないータダより高いものはない。







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