盆休み、子は塾や友達との遊びで不在にすることが多く、夫と丸一日二人きりになってしまうこともある。
これを、夫婦水入らずと喜ぶ家庭もあるのだろうけれど、我が家はーというより私は気が重い。
会話が無いことに加えて、用事が増える。
洗うコップの数も増えるし、何かと家事で目に付くあれこれを指摘されてうんざり。
だが突然、夫が昼ご飯は外食にしようと言い出したのだ。
連れて行かれたのは、回転寿司店。徒歩で行ける近所の店。
ただ、100円寿司ではないのでちょっとした高級回転寿司店だ。
一皿200円代~高いもので1000円近くするものもある。
普通の回転寿司店のように、皿の色で価格が分かる仕組みにはなっているので、会計までに大体の値段が把握出来るのは有難い。
「あなたも新しい仕事に慣れて来たことだし、まあお疲れ様ってことで。今日は俺がおごるから。」
気分良さそうな顔でビールをオーダーし、早速夫はまあまあ高いネタを頼む。
本マグロの大トロだ。
最近、食欲もなく沈んでいた夫の感情の起伏に振り回される。
何か良いことがあったのか、それとも空元気か?
何でも頼めと言われ、だが一番安い皿を頼んでしまう。
結婚して十数年経った今も尚、夫の前で自分を出せない。
節制ある妻を演じてしまうのだ。
200円代のいかや鉄火巻を頼んでしまう。
本当は、うにやいくらなどの魚卵が好きなのだが。
どうせなら、最初からネタが決められているランチ握りセットを二人分オーダーしてくれたらいいのに。
夫の寿司ネタを選ぶ順番は、なんだか下品に感じてしまう。
まずは、あっさり目のネタから頼んで、徐々に油が乗った濃厚なネタを頼むのがマナーではないかと思うのだけれど。
夫が頼んだ皿の殆どの色は金。逆に私が頼んだ皿の殆どは白。
食べている最中なのに、こうして金勘定をする私も十分下品だ。
夫婦、結局は合わせ鏡なのだとこういう場面で実感する。