クレーンゲーム

クレーンゲーム わたし
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 パート帰り、嫌なことが積み重なってモヤモヤする気持ちを切り替えたくて、ゲーセンに寄った。
昔から、ふらっとゲーセンに寄りがちな私。
専業主婦時代もそうだった。ギャンブルじゃないしー、数百円使うなら可愛い息抜きだと言い聞かせる。

ガチャガチャをやろうと思い、店内をうろうろしたけれど、特に欲しいガラクタがなく、通りすがりに私と同世代の女性がスーツ姿でクレーンゲームをしているのが目に入り、なんとなく目で追う。
取れそうで取れない。
アームが景品のマスコットをいったんつかむものの、落とし口に近付くとなぜかぽろりとこぼれる。
私も挑戦したくなり、ひとつ挟んだ隣のクレーンゲーム機にコインを入れた。
ちらっと、自販機に行けばジュースが買えたな・・と思いつつ、でもなんだか取れそうな気がして矢印ボタンを押す。ウイーンとアームが動く。
正面からでしかケースの中を見ることが出来ないので、奥行きがバグる。本当にうまく出来たゲームだ。
もうちょっと奥だったかー、そう思うのと同時に、アームの一方が狙っていた景品とは別の景品に引っ掛かり、うまくつかめないまま空振り。

「あー・・」

 思わず、声が出てしまった。
気付くと、財布から100円玉をまた取り出していた。そしてまだ200円残っていることを確認し、400円まで使おうと自分に甘くなる。
今度はうまくつかめ、上まで景品が持ち上がった。心の中でガッツポーズ。
しかし、隣の女性と同じ運命さながら、落とし口付近でアームから景品はこぼれてしまった。
もう一度ーと、財布にある200円を使い切ったところでおしまい。
残念な気持ちになりつつその場を離れようとしたら、先程の女性が背後におりすかさず台を奪われた。
待たれていた?何となく気になり、鞄の中に財布をゆっくりしまう振りをしつつゲームの様子を眺めていたら、先程私が落とした景品近く、え?そこ?という具合にアームを降ろす。
アームの片側しか景品に触れないじゃないかーと思うより先に、なんとアームが上に戻ろうとする力で景品が落とし口に吸い込まれていった。

うわー、悔しい!!と何とも言えない気持ちになっていたら、女性がくるっと振り返り、

「これ、どうぞ。」

 猫の小さなぬいぐるみを差し出す。
え?私に?と驚くと同時に、いやいや、結構ですとジェスチャーしたが、

「さっき、何度もやってましたよね。私、取れたらそれで満足なので。」


 そう言い残し、無理やりその猫を私の手元にぐいっと押し付けるとそのまま別のゲーム機へ流れて行った。
辺りには、彼女の残り香。営業なのか、割ときちんとしたメイクとスーツ姿の彼女はきっと、私同様に仕事がうまくいかなかった一日で、だから気持ちをポジティブに切り替えたかったのかもしれない。
景品が欲しい訳じゃない、取れた時の快感を味わいたい。
小さな達成感でも、自分に自信が無い時に必要な応急処置。
大人のクレーンゲームはきっと、皆、そんなもの。
帰宅し、子が私の持っている猫が欲しいと言うので渡すと、早速スクバに付けていた。
モフサンドというキャラクターらしい。

「これ、どうしたの?」

 子に聞かれ、一人でゲーセンに行ったことがばれるのも嫌だったので、


「職場の人に貰った。」

 その場凌ぎの嘘をついた。
あの人の他にも、学生とは程遠い、仕事をしているようなしていないような男性だったり女性があちこちにおり、お手軽にストレス解消、レジャーを楽しむ大人達が増えたなと思う。
子どもの小遣い程度で遊べる場所。大人だって、そんな場所が必要なのだ。

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わたし
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隣の芝生
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