出張買取

インターホン 生活
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 やってしまった。
受話器を置き、少し経って自分の浅はかさに気付く。


 家電は滅多に鳴らない。
高校から?とまだ下校していない我が子の身を心配して電話を取る。
すると、いかにもコールセンター的な雑音に混じって営業トークが始まるぞと受話器越しでも分かる声。
しかし、よくよく聞くとセールスではなく、むしろ買取だった。


「ただいま買取りキャンペーンをしてまして、45ℓ一袋、何でもいいです。子供服でも紳士服でも。下着以外であれば古い服何でも入れて下さって、1000円で買い取りますので。」


 私と同世代と思われる、愛想の良い声にすっかり警戒心も解かれる。
丁度、メルカリに出すのも面倒で段ボールに入れっぱなしになっている服が大量にあった。
一袋といわず、3袋分くらいある。


「結構古いんですけど、大丈夫ですか?毛玉のついたトレーナーとかなんですけど。」

「はい!何でも。ただキャンペーンですので、一世帯につき一袋でお願いします。」


  不要品を渡すだけで1000円なんて、お得でしかない。
メルカリのように梱包したり、箱を用意したりやり取りしたり、またコンビニに出しに行ったりの手間もない。
最近の気忙しさでメルカリとも疎遠になっていた。


「じゃあ、お願いしたいです!」

「では、明日はどうですか?」

「明日は都合が悪くて・・来週なら。」

「承知しました、では来週の・・」



 とんとん拍子に日程が決まる。住所を聞かれ答える。
わざわざゴミを取りに来てくれて、しかも1000円くれるなんて。ラッキーだ。
家にいながら小遣い稼ぎ、何か裏があるのでは?
そんな風に何気なくネット検索をし、やってしまったことに気付く。
1000円は餌で、目的は他のところにある。
スマホ画面をスクロールすれば、詐欺だとかクーリングオフだとか悪質商法だとか、出て来る出て来る不穏な言葉がずらり。まさに、甘い話には罠があるーに嵌ってしまった馬鹿な私。

そういえば子がまだ幼かった遠い昔にもやってしまたことを思い出す。
無料だか格安で食品セットの詰め合わせが貰えるとかで、取り寄せたら定期契約をごり押しされた。
断ると、ものすごい対応が悪かった。しばらくその後味の悪いやり取りを思い出しては切り替えられず、嫌な思いをしたものだった。

そして、更に悪い想像をする。
住所を知られた。押し入り強盗だったらどうしようーだとか。日程調整の時、いつが不在かも聞かれたので空き巣の下調べ?だとか。
不安が不安を呼び、当日は居留守を使おうとすら思う。
1000円、こちらが支払ってもいいからキャンセルしてしまいたい。





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