そういえば、実家へ行った時に実母がジュエリーBOXからいくつかネックレスや指輪などを出し、これはいくらくらいになるかしら?と聞かれたことを思い出した。
裕福ではない暮らしの中で、だが浪費家でもある彼女は、パート時代は給料が入ればちょこちょこ百貨店のジュエリーショップに行き、何かしらご褒美だといって購入していたし、父からも誕生日や記念日などにカルティエなどのブランドジュエリーを買ってもらっていたりもした。
今は、弟がパチンコやスロットで勝てば、貰ったお金をすぐに使う母。きっと私達があげたお年玉もすぐにジュエリーに化けるのだろう。
「これも、もう要らないから売ろうかしら。今、金が高いからね。良かったわよ、投資してて。」
投資だろうか?結果的にそうなっただけで、買った時は浪費だった気がするけれど、思うだけで口にはしない。
「あんたも、いつも冴えない恰好してるけど。偽物なんてやめなさいよ。もう50になるのにみっともない。ジュエリーはちゃんとしたものを買わないと。それ。本物?」
唯一、お気に入りの本物のネックレス。何年も前に清水の舞台から飛び降りるように勢いで買ったもの。母はそれを偽物だと疑った。
「ピンクゴールドだよ、本物の。何万円もしたよ。」
「あら、そう。」
「いずれ、私がいなくなったらこれは全部売ってお金にしてね。」
形見分けの話かと思った。娘や孫に譲るーではないのか?と思い、聞いてみると、お金にして弟に渡してくれというのだ。
カルティエのトリニティ、あれは、私が譲り受けていずれは子にーそう思っていたのに・・
そして、私が独身でまだ実家にいた時には、あれを父に買ってもらう時に切り札のようにいずれは娘や孫に行くのだから安いもの!なんて言ってたのに・・あの話は無くなったということだろうか。
正直、意地悪だなと思った。なら、弟に直接頼めばいいし、娘の私にわざわざ言うか?とカチンと来る。どこまでも、娘より息子なのだなと残念に思う。
私の表情が暗くなったことに気付いたのか気付かないのか、
「あの子は独り身だし、心配なのよ。だって、あの子がお金に困るイコールあんたに迷惑を掛けるってことでしょ?だからね、少しでもあの子にお金を残すことがイコールあんたの為でもあるのよ。」
物分かりの良い娘を演じること、それが親孝行なのだと言い聞かせる。分かってるよと頷きながら啜るお茶は生温くてまずい。母から私への愛情に適温なんてあっただろうか。
「あんたも、今からでもゴールド買って花子の為にジュエリー投資した方がいいわよ。」
「そうだね、一人っ子だから全部花子に行くもんね。」
チクリと棘を刺すつもりで言ったけれど、鼻歌混じりにトリニティリングを磨く母の心に私の言葉は一切届いていないようだった。
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