昼に終わり、真っ直ぐ帰宅。
最短で帰宅出来る近道を見付けた。
どこにも寄らず、一目散に家に着くとまだ昼過ぎ。
疲れた。すぐに手洗いとメイクを落とし、忌まわしいストッキングを脱いで部屋着に着替える。
私が私に戻る瞬間だ。
鏡をふと見ると、顔のたるみは勿論のこと気になるのが首の皮の皺。
年を取ると、一気に首に出ると聞いても他人事だったのがついこの間のよう。
今はもう手遅れであり、毎朝毎晩安いクリームを塗りたくっても、皺は濃くなるばかり。
テレビに懐かしい有名女優が出ており、しばらくぶりに見たのだけれど、彼女の老化っぷりに驚いた。
人前に出るプロであり、また美容には人一倍気遣っているのだろうけれど、そのたるみと皺は彼女の若かりし頃の人相を変えてしまう程。
確か、ずっと親の介護で大変だったと何かの番組で知ったことを思い出す。
そして思う。
老化は日々の美容やエステで留めるのではない、幸福感で留めるのだと。
人知れず苦労は、当本人にしか分からない。
気苦労は、どんなに頑張っても顔にも体にも出るもの。
首の皮をびょんと伸ばした。
「首の皮が繋がったな。」
ぽつり、呟く。
仕事、再開。どうせなら首にして欲しい。
休んだ分、振り出しに戻ったかのように仕事の手順を忘れていた。
その中で頭も体も覚えていたことはたった一つ、中山さんの口癖。
「イテ!!」
何かにぶつかってなのか、何か分からないけれど。
突然叫ぶその声に、
「大丈夫ですか?」
声を掛けてしまう。
スルーするのが正解なのかもしれないけれど、それも感じが悪いような気がするのだ。
久しぶりに聞いたその声、やっぱり苦手だ。
気遣うべきなのか悩ませるそれに、嫌悪感。心の中で叫んで欲しい。
繋がった首の皮は、老化を更に進めて行く。