終わらない仕事

りす 仕事
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 要領が悪いのか、振られた仕事が時間内に終わらない。
木佐貫さんから、今日の帰りまでに出来ればいいよと言われた仕事。
朝一で振られ、取り掛かるけれど、あっという間に他のルーティン雑務をしていたら午前中が終わってしまい、午後になって始めるけれど、電話応対から発生する処理やその他諸々しているうちに15時。
今日は、花山さんが休みの分、2人で手が空いた時に処理する業務もパートの私がしなくてはならないからてんやわんや。
16時前にようやく取り掛かるものの、間に合わない!とパニック。
きっと、落ち着いて手順を踏んでやれば出来るはずの業務なのに、定時で終わらせなければ!というプレッシャーに支配され、頭が真っ白になってしまうのだ。
電話が鳴る度に苛々し、だが私が取らなければ誰が取る?という雰囲気のフロア。
勿論、私が他の電話を受けている時に外線が鳴れば、誰かしら取るのだけれど。
花山さんと2人勤務の時は、暗黙の了解で電話応対はパートの仕事なのだ。
だがその殆どはお偉いさんへの取り次ぎが多いので、伝書鳩のようにただ誰からなのか伝えるだけという。
営業電話も多いので、最初は馬鹿丁寧に受けて取り次ぎなどしていたけれど、米田さんからいちいち受けるなと言われたこともあり、それからは自分用のリストを作成し、営業電話は繋がないようにしていた。
そんな中、焦りに焦り、失敗した。
取引先なのに、営業電話だと勘違いしてしまったのだ。

「申し訳ありませんが、終日不在とさせていただいております。」

 雑務に追われ、苛ついていたこともあり、塩対応。
そんな電話があったことを忘れ自分の仕事に没頭していた時、米田さんからお叱りを受けた。

「芝生さん、14時頃にあったA社の電話、なぜ回さなかったんですか?部長、A社から回答待ちの件でずっと連絡を待ってらしたのに、なかなか電話が来ないから、こちらから電話をしたら不在だと言われたって・・ちょっと揉めてしまったようです。明日、部長に芝生さんからも一言謝っておいて下さい。」


 私の作成した、電話応対のリストにはしっかりA社はバツ印が付けてある。
勘違いだったのだろうか。一気に汗が噴き出る。

「申し訳ございません!!」

 メールで部長宛てに謝罪をし、そんなことをしていたらすっかり定時近くに。
木佐貫さんから一日がかりで仕上げてと言われていた業務も半分も終わっていない。
もう無理だ・・残り、20分でなにをどうやっても無理。
泣く泣く、木佐貫さんに定時で終わらないことを伝えるはめになった。


「あー、そうですか・・分かりました。私、やるんで帰っていいですよ。」

 明らかに、期待外れというようながっかりしたような表情の彼女に、申し訳なさと自分の不甲斐なさで胸がいっぱいになる。
しかも、彼女がその後に家で留守番をする子どもに電話をしている声が耳に入り罪悪感。

「ごめんね、ママ、ちょっと遅くなるから。うん、うん。いいよ、観てて。6時半には帰るようにするね。パパにも連絡しておく。」

 社員とパートの違いといっても、まだ小さなお子さんを抱えて働くワーママの彼女に大きな負担を掛けてしまったのだ。そしてそのお子さんにも。

 なんで、こんなにいっぱいいっぱいになるのだろう。
ITの時は、分からないことが分からないというストレスで退職を決意した。
工場や総菜は人間関係。
そして今度はー、やっぱり自分の能力の限界。
ただ、落ち着いて時間を掛けたらなんとかこなせる仕事なのだ。スピードと正確さ。これが足りない。
そして、すぐにパニックになり、作業効率が低下する。
慣れれば人並みに出来るようになるのか。それとも向いていないのか。
とてもじゃないが、給与明細云々について伝えることなど出来なかった。
あぁ、自分が嫌になる。

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