木佐貫さん経由で依頼された仕事ーすなわち、米田さんからの仕事を持ち帰った。
チャットで説明があり、だがよく分からなかったので木佐貫さんに聞きに行くと、
「先月もこういう感じで計算してますから。花山さんや黒川さんも前回のを見ながらやってます。難しいことじゃないんで。」
ちょっとは考えてよといった感じで、私の質問に答えることはなかった。
どういう計算をしたらこの数が出るのか?本当に分からなく、しかも花山さん不在で明日の〆切。
明日は彼女の代わりに出るから聞くことも出来ない。
黒川さんの手が空いたタイミングで聞こうと思い待っていたけれど、彼女は彼女で割と大変な業務を米田さん直々に振られているようで、喫煙所にも行かないし、珍しく余裕が無さそうだった。
社員が打ち合わせに出払ったタイミングで、黒川さんに勇気を出して聞いてみた。
前回その処理をしたのが黒川さんだったので、どうやってその数字を出したのか聞いてみたのだ。
すると、親切に教えてくれた。
「この前月分の金額は、この合計値を支店数で割って・・」
とても複雑な計算で、頭が混乱しぼーっとしそうになるのを何度も抑えた。正直よく分からない箇所もあったけれど、それ以上の説明を求めると、彼女の仕事が滞ってしまう申し訳なさもあり、必死でメモを取るにとどめた。
「お時間取らせて、申し訳ありませんでした。」
「いえ、大丈夫ですよ。それ、面倒ですよね。」
若いのに、私より米田さんより大人だ。
デスクに戻り、退社時間まで10分。〆切は明日の午前中なので、いつものルーティンに加え、他の業務を振られたら間に合わない。
なので、自宅に持ち帰ることにした。プリントアウトし、バッグに入れた。
夜、電卓を叩きながら仕事をしていると、夫に見られ、驚かれた。
「何してんの?仕事!?」
「うん。明日までに提出しないとで。」
「まさかタダ働き?パートだろう?残業代出るんだろうな?」
「うん・・」
パート先にクレームしかねない夫なので嘘をついた。
残業代なんて出ない。自主的な持ち帰り仕事だから。それだって素直に伝えたら馬鹿にされるだろう。
メモを見ながら、黒川さんが前回出した数字になる仕組みを追うけれど、やっぱり分からない。
なぜ、この数字になるのか?途中までは分かるけれど、その後がさっぱり。仕組みを理解し、今回の分までやってしまおうと思っていたのに無理だった。
また朝一で黒川さんに聞くのもきつい。木佐貫さんに聞くしかないのだけれど、気が重い。
時間外労働
