失礼な講師

ヨーロピアン家具
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 ピアノ講師から、辞める理由についてもう少し詳しくお母様の方から話を伺いたいので、都合のつく日に教室に来てくれと返信が来た。
先日、送ったメールの返信だ。
やっぱり、電話で伝えた方が良かったかもーと若干、後悔。
日程を合わせ、教室にお邪魔することにした。
手ぶらで行くのもなんだかなと思い、八百屋でちょっと良い桃を買って。

「これ、お裾分けです。」

「あら、ありがとうございます。」

 貰い慣れているのだろう、これまでも土産やその他諸々、何かにつけ渡して来たのだが、どれも彼女の欲しいピントからずれているのかいまいちの反応のうえ、だが貰って当たり前といった感じで受け取るその態度にこれまでもモヤモヤして来たのだけれど。

自宅に上がり、レッスン室ではなくリビングに通された。
高価そうなヨーロピアン家具、それにシャンデリア。ソーサー付きのティーカップに紅茶が出される。
恐縮しつつ、お礼を言う。


 すぐに本題に入った。だがすぐに、引き留めに掛かる講師。
やはり、焦って辞めなくてもお休みして合格したら再開すればいいのではないかと。
それに、続けることに意義があること。これまでも休んだことのある子がピアノをやりたいと戻って来てくれた時、心底嬉しく、今回もきっとまたあの時と同じ様に戻りたい気持ちが芽生えるのではないかと。

「受験にだって、ピアノを習っていることは強みになるはずですよ。面接で、趣味特技に使えるし。音大受験じゃないからこそ、アピールすることだって出来ますよ。」


「就職活動にだって、きっと役に立ちます!私の教え子でも続けていたから良い企業に決まったと報告してくれる子がたくさんいます。」


 音楽関係の企業ではなく、ピアノを習っていたから一流企業の内定が取れただなんて話、誰が信じるのか。それはそもそも何かのコネがあったり、そうでなくても本人のそもそもの学歴や素質じゃないのか。なんでもかんでもピアノに結びつける講師。
そういった、講師からしたら続けることで得られるポジティブな面ばかりを強調してくる。
だが、何度も子と話し合い、決めたのだ。
話し合いから一時間経ち、ようやく諦めてくれた講師。だが、


「そこまで集中しなくちゃって、早慶レベル目指している訳じゃないですよね?前に、花子ちゃんに志望校聞いたら、そこまでレベルの高いところじゃなかった気がしたから。普通にレッスン続けていても、去年は学習院だとか理科大行った子もいますよ~」

 こういう失礼な発言に、カチンとする。そして、所詮、ピアノ講師は教育者でもなんでもないのだなと思う。この講師に限って言えば、普通の会社では通用しない非常識な部分を多々感じる時があるのだった。


「他所のお子さんは優秀なんでしょうね。うちの子は、ちょっと努力が必要なので・・」


 こう返すしかない。
しかし、講師の無神経は発言は続く。他の優秀な生徒の受験体験が、まるで自分のお手柄かのように自慢げに語るのだ。その他ーそうでもない平々凡々の生徒の話なんて、これまで出たこともない。
結局、我が子も講師からしたらそんな扱いの生徒で、教室を辞めてしまえばそれまでの関係なのだ。


「辞めますと言って、今月来月末にすぐにっていうのはこちらも色々と困るんですよ。発表会は仕方がないにしても、最後のレッスンを最高の形で終えられたらと思っているんです。何年も続けて下さった生徒さんだからこそ。」


 生徒のことを思ってーそこを強調する講師。
だが本当に思ってくれているのなら、子の気持ちを汲んで欲しいのが本音。


「こちらの我儘ですので、月謝は向こう2か月分お支払いします。でも、今は受験勉強を第一優先に考えていますので、フルでレッスンに出るのは厳しいと思いますし、そこら辺は子どもと先生で話し合って調整していただきたいです。」

 なんだか苛々して、こちらも言い方がきつくなってしまったかもしれない。
だが、やっぱりこの講師に対して昔から抱く嫌な感情が勝り、もう辞めるのだからどう思われようが構わないーと普段は出て来ない強気な自分が顔を出した。


ちょっとムッとした感じになった講師の態度に怯みそうになったが、でも向こうのペースに飲まれてなるものかーと堪える。
結局、9月末で終了という約束をした。最後のレッスン日については、2人で話し合って決めることにして貰った。


「えー、もう行く気なかったのに。」


 話し合いの結果を子に伝えると、面倒臭そうに言い放つ子。
子も、講師のことをリスペクトしていないのがこの態度で分かる。


「ママは伝えたよ。でも辞めると伝えてすぐってのは非常識。先生の気持ちもあるんだから。ちゃんと先生と話して最後のレッスン日は決めなさいよ。」


 例え嫌な講師であっても数年は世話になったのだからーと、最低限の礼儀の必要性を親として教えなければならない。



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