地雷踏んだ

家族
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 義実家訪問を終えて・・
疲れた。
子は、受験ということもあり今回は付いてこなかった。
夫も、今の時期に親戚からの余計な刺激を受けさせても良くないと思ったのか、すんなりとそれを受け入れてくれた。
その代わりといったらなんだが、嫁の私が頑張らなくてはならない。
相変わらず、敷居の高い義実家。一同、既にリビングに鎮座し酒を酌み交わしており、その中に真っ先に飛び込んで来たのが三女の姿だった。
物凄く、痩せていた。目の周りは落ちくぼみ、顔色も悪かった。化粧もしていないのか、義姉らの中では末娘ということもあり、若々しく今時のメイクにファッション、ネイルも定期的に通っていた彼女だが、まるでその面影はなく、下手したら私より老けて見えるのではないかと思う程の様相だった。

 長女と次女は、そんな三女を慮るように優しく、義両親も、また夫も、なんだかぎこちなくも酒を進める。三女はノンアルで、恐らく薬を服用しているのだろう。
ただ、異様にはしゃぎ、けらけら笑い、まるで酒を飲み酔っ払っているかのよう。
キッチンで皿の準備をしていたら、こそっと次女に聞いたのは、薬の副作用だという。

「今日はね、ちゃちゃっと食べて、あんまり私も長居しないつもり。」

 姪のあいちゃんらや義兄らも、三女の振舞いに困惑したようで、まるで腫物に触るかのようだった。
私は内心、ほっとしていた。
いつも蚊帳の外にいる私は、好き勝手に振舞う義家族が苦手だ。
たまに気まぐれで私に会話の水を向けるものの、結局は気分を害する話題に愛想笑いをしたりしつつ遣り過ごすことに、疲れ果てる。まったく楽しくない。我慢の時間。

今回は、三女が病気ということもあって、皆が皆、口を開くことに慎重になっているようだった。
仕事を休職し、今は日中何をしているのか?誰もそのことに触れない。彼氏もいないようだし、年齢も私より年上の50代、独身の彼女。
ついこの間まで、私を見下して笑っていた彼女だが、彼女からキャリアを取ったら何が残るのだろう?
途端に可哀想に思い、隣に座る彼女に声を掛けた。

「体調、どうですか?ゆっくり休んだらいいですよ。今まで頑張り過ぎたんですよ。」


 私なりに、彼女を気遣っての言葉だった。
だが、その一言が彼女の地雷を踏んだのか?途端にそれまでの笑顔が消え、


「人のこと可哀想って思うの、最高の娯楽だよね。」


 私にだけ聞こえるよう、囁くように彼女は言った。
周りは、それぞれの会話に興じ、こちらの様変わりした空気に気付かない。
そんなことはない!と言いたくても、彼女の射るような目は私を硬直させ、何も言えなくしてしまった。

 それから彼女は部屋に引きこもってしまった。
まだ飲んでいる家族らには、疲れたから休むねと言って。
やつれた笑顔に、労わるような視線を向ける義家族達。私は、彼女に視線を向けることが出来なかった。






 

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