トイレで用を足す時、ふと自分のあそこに目をやると一本の真っ白い毛を見付けた。
黒い茂みの中で、ピンっと元気に、「私はここにいますよ!」と主張しているそれは、私にショックを与えた。
頭髪は既に白髪染をしなければならないくらいに白いけれど、下の毛についてはまだ若く、とうとうこっちの方の老いもやって来たかと思うと同時に、確実に自分の身体が朽ちて行くのが身に染みて、最近の体調不良も相まって落ち込んでしまった。
体調が悪いと言いながら、つい酒に手が伸びる。
といっても、ストロングは控えてワインやビールをグラス1.2杯に留めているのだけれど。
だらだらとそれを飲みながら、昼間のワイドショーを観て、うとうと昼寝をして。
午前パートを終えて帰宅すれば、どっと疲れて家のことなどする気にならず、うだうだと時間の許す限り怠けてしまう。
子どもが帰宅するまでの時間は、私のゴールデンタイムだ。
こうなりたい自分はいるし、こうなろうといったん行動しかけるのだけれど、途端に気持ちがくじけて横道にそれてしまう。
例えば、フルタイムの条件が良い求人を見付けて応募しようとクリックして次の画面に進んだところでなぜか、興味をそそられる広告マンガが目に入ってそちらに進んで戻れなくなるとか。
ならばまた簿記の資格でも頑張ろうと、部屋の書棚の奥からテキストを引っ張り出したところで、ばらっと昔に購入した生活雑誌が落っこちて、書棚に戻すついでに何となくパラパラ捲るうち、いつの間に寝っ転がって読みふけってしまったりということだ。
子が、学校から帰宅したらすぐに子ども部屋にこもり、オンライン塾で勉強しているのを横目に、だらだらとソファーに寝そべり、あと15分・・スマホをいじる。15分経ったかと時計を見たらまさかの30分以上経っており、自分の意思の弱さにほとほと呆れてもうどうでもいいやと投げやりになる。
一週間後、トイレで用を足しながら、再び自分のあそこに目をやれば、1本だったはずの白い毛が3本に増えていたので驚いた。
たった一週間で!?いや、気付いていなかっただけかも。
身も心もだらけた生活をしているから、栄養をこんなところにまで届ける必要などないだろうと、本人の意思など無視して身体がそう判断したのかもしれない。
「はぁー--。」
深いため息をつく。
しかし、頭髪もそうだけれど、毛根は生きている。
メラニン色素を作り出すメラノサイトの活動がいったん停止しているだけ。
思考を無理やりプラスに変えるが、その一方で、いったん白くなった毛が元通りになるのは難しいだろうと思う。
年を取るって悪いことばかりじゃないと言うけど、そんな風に前向きに思える人って、私のように投げやりではない、誠実に、日常と向き合って来た人なのだろうと思う。