義父に謝罪の電話を入れた。
本来なら、直接出向くべきだろう。だが仕事もあるし、訪問となれば一日がかり。
今度、休みの日に改めて行くことにした。
電話越しに聞く義父の声は、なんだか弱々しく疲れているようだった。
だが借金の話になれば、親として当たり前のことをしただけだと言う。
「最低限の生活費はこっちだって残しているし。心配しなさんな。ただ、私もいつまでも元気な訳じゃないからね。お母さんの面倒も見ないとならないし、それに心配事はまだあるから。」
三女のことだった。
結婚せず、実家暮らしの三女のことを義父はとても心配しているようだった。
兄弟皆、平等にーそう思っていても、実際のところは共に暮らしている娘が一番可愛い、それが本音だろう。
心配と可愛いは比例している。
「私達に何かあれば、カズヒロに色々やってもらうことになる。だから芝生さんにも色々と迷惑掛けてしまうだろうけどー」
正直、重荷だ。要するに、三女のことを気に掛けてくれということだろうけれど。
だが、夫が借金している手前、今はただその言葉を受け入れるしかなかった。
「花子の分も、大学は何とかなるようにしているし。爺さんとして出来ることはこれまでだけどな。」
「え?どういうことですか?」
「カズに聞いてないか?花子の大学資金は、数年前から贈与が掛からない程度に毎年口座に振り込んでいるんだが。」
またしても頭が真っ白。
息子に金を貸したうえに、孫の大学資金まで調達してくれていたのか?
いったいいくら?そしてその口座って?私が知る通帳にそんな振込など一切なかった。
「まぁ、出来る時に出来ることをね。持ちつ持たれつやっていきましょう。」
引き換えにー介護の文字が脳裏をよぎる。
ちょっと待ってよ、私の知らないうちに・・
夫に対し、怒りが湧いた。
ぐっと感情を抑え義父にお礼を言い、必要以上に受話器を静かに置いた。
いったいいくらの贈与を受けたのか?勘弁して欲しい。