「ママ、この家にいつまで住むの?」
最近、子が頻繁に口にする。
ここに越して来て10年以上。当初から築年数はだいぶ経っている物件だったが、最近では家の中のあちこちに劣化が目立つ。
風呂場やキッチン、トイレなどの水回りは古いタイプのもので、綺麗に掃除をしてみたところでそもそも前の住民の時から染み付いた汚れは落ちず、住んでいてまったくテンションの上がらない我が家。
テレビで綺麗な住宅を目にする度、羨望のため息をつく日々を送って来た。
子は高校生になってから、何度か友達の家にお泊りに行くことがある。
その友達の家は金持ちなのだろう、新築一軒家。今時の水回りで、タイルが可愛くてお洒落な洗面台だったと子から聞いた。
無駄に壁が無いすっきりとした広いリビングにはいくつもの観葉植物が置かれ、床に物が散らばることもなさそう。子供部屋も十分広く、そして陽当たりも良かったのだと。
対し我が家、子ども部屋は狭く、窓も小さい。
夏は暑く、冬は寒い。狭いのでエアコンを付けると途端に部屋中が暑くなり過ぎて、温度調整が難しい。しかも家中どこも湿気が起きやすく、壁のいたるところに壁が発生するので掃除も大変。
最近では、あちこちの壁紙が剥がれ、なんとか補強テープなどで修繕しているけれど素人がやることなのでうまくいかない。
「古いし汚いし、この家にいつまで住むの?」
私だって、綺麗な家に憧れる。
だが現実問題、家を購入するなんて無理。夫が自営を始めさえしなければ購入はまだしももっと綺麗なマンションに引っ越すことだって夢ではなかったかもしれないけれど、現状無理。
「ねえ、ここも壊れてるんだけど。あり得ない。」
今度はどこ?
苛々した子の声にげんなりする。そして、普段は口うるさい夫がこういう部分についてはスルーなのがどうも解せない。
鏡でふと自分の顔を見てその劣化ぶりに驚く。しみにしわにたるみの三重苦。
この家だけではない、自分もこの10年あまりで随分と古くなってしまった。
夫はいずれ、三女と親が住む義実家に移れば良いとでも思っているのだろう。
私は無理だ。そうなると、どうなるのだろう。一人で生きて行く術を見付けなければならない。
家が古いとか汚いとかその前に、じりじり迫る老後を思うと今がまだマシな気がしている。
劣化した家と私
