事務パートでの私の扱いは下っ端。
私と同期の花山さんはあんなキャラでも仕事は出来るし、後から入社した黒川さんも若いから吸収力が良く機転も効き、出しゃばらず良い力加減で仕事をする。花山さんの話だと国立大卒らしく、皆から一目置かれている。
対し、私が任される仕事は、コピーやスキャン、ファイリング。
時々入力の単純作業。たまに伝票整理。
だが、花山さんらが休みを取ったり業務が立て込めば、単発で頭を使う作業を言い渡されることもある。
「これ、ちょっと数字おかしいぞ。」
部長が大きな声で木佐貫さんに声を掛ける。
すると、皆が一斉に私に視線を向ける。
「これ違ってる、誰がやったの?」
米田さんが私達パートに向かって言うけれど、なぜか目が合うのは私。
確認印が私のものなら素直に受け取り謝罪出来るけれど、そういった確実ではないミスもなぜか私のせいになるのが納得いかない。
この間は請求書のミスが発覚し、米田さんが私のところに来てミスを指摘したけれど、その処理は花山さんがやっていたような気がしたが、隣にいる彼女のせいだと言い出せず、「すみません・・」と取り敢えず謝った。
だが花山さんは聞こえているはずなのにスルー。自分の業務に忙しい素振りで知らん顔。
なんだかやり切れない。
しまいには、
「これ、芝生さんやった?」
給湯室にあるポットのコンセントが外れており、私は触った記憶もないのにいつも昼休憩を取る私が外したと思われた。
「来客だからお茶出さないとなのに。」
軽く苛つかれた。
私じゃありません!と声を大にして言いたいのに、喉の奥に何かが詰まって声が出ない。
あまりにもそういうことが多いので、ついに反発してしまったのが昨日のこと。
「あの、その処理はそういう流れになるとは教わっていないので手を付けてないです。」(要するに、そのミスした処理は私ではない別の誰かがやったんですけど・・)
「いや、そういうことじゃないでしょう。分からなかったら聞いて欲しいし、手を付けないか付けるかはあなたが勝手に判断することじゃないから。」
木佐貫さんに言われ、即、謝った。
ミスの指摘だったのに、仕事に対する姿勢についてお説教。
だが冷静になり、彼女の言い方に矛盾を感じる。
手を付けるか付けないかで、確かに私は「付けない」判断をしたのだけれど。じゃあ手を付けてミスをしたらそれも勝手な判断ではないだろうか。
そんなモヤモヤを直接ぶちまけてやろうかという衝動と戦いながら、彼女は仕事は出来るかもしれないが民度が低いのだと心の中で見下すことによって自分を保つ。
そうやって、表と裏を使い分けている私の方がよっぽどなのだけれど。
それにしても、一度出来ないレッテルを貼られたらおしまいだ。
出来ないレッテル
