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 花山さんの代わりに今日も出勤だった。
パートは、私と黒川さんの2人。
彼女と仕事以外の会話はないが、別に私のことを嫌っている感じはない。
挨拶はきちんと向こうから笑顔でしてくれるし、私の出来ない仕事を肩代りしてくれる時だって、花山さんのようにやってやってる感を出すタイプではない。
黒のジャケットに黒のパンツー、入社時から変わらない彼女の服装。
オフィスカジュアルならなんでもOKの職場だが、若いのに堅実なのか服装をとっかえひっかえしない感じ。花山さんの方が流行を常に追いかけているファッションで、後ろ姿だけみたら、どちらが年上だか分からないくらい。
だがお洒落に興味がない訳ではなく、ヘアスタイルもインナーカラーを取り入れつつキラキラしたピアスやネックレスなどのアクセサリー、ネイルも綺麗にしているし、何よりスタイルがいい。すらりとしており、足も長い。ユニクロでもお洒落に決まるーそんな体型の彼女。控えめながらも今時な感じなのだ。

「黒ちゃん、これ花山さんが先週出してくれたんだけどさ、どうしてもこの数字がおかしいの。見て貰える?彼女、ちゃんと見直してないのかなー。」

「はい、分かりました。」


 花山さんでもミスはする。そしてそのミスを米田さんは本人に指摘し辛いのか、毎回、黒川さんに修正させている。私がミスした時は直に指摘してくるのに。
そして、黒川さんは滅多にミスを出さない。正確で仕事も早い。頭が切れるのだ。


「終わりました。ここ、この数字が悪さをしてたみたいですね。」

「あー、本当だ、私も気付かなかった。ありがとう、黒ちゃん。」


 明らかに、彼女に対しての声色が違う。
なんなら、後輩社員の木佐貫さん以上に買っている感がある。
そして黒川さんの恐らく気に入られている部分、それはー、
パートなので、出過ぎず控えめに、言われたこと以上の仕事をする時だって、匙加減が上手い。
嫌味なくさらりと社員のプライドを傷付けない程度にこなすところ。
花山さんは天然ということもあり、社員のミスを見付けたらこれ見よがしのところがあるので、そういったところも米田さんは最近鼻に付いているようだった。


「お昼、ランチ行かない?」

「ごめんなさい、今、お金なくて。今日はお弁当なんです。」

「え?持って来ちゃった?おごったのに!」

「うわ!本当ですか?残念ですー」


 米田さんが直々奢ってまでランチに誘うくらい、彼女は誰から見てもお気に入り。
だが当の本人は、仕事の時は上司に忠実だが、プライベートとはうまく切り離している風だった。
私はお昼上がりなので、社員が昼休憩の合図と共にばたばたとランチへ出掛けるのと同じくして帰り支度。
ちょっとトイレへ寄って帰ろうとしたら、その手前にある喫煙スペースに黒川さんがいるのを見付けた。
スマホ片手に、壁に寄り掛かり煙草をふかす彼女。
あぁ、煙草を吸うのか。そして、その姿が堂に入っており、なんだか挨拶するのが躊躇われた。
その後ろ姿は、人を寄せ付けないガードのようなものがあるのを感じさせたからだ。
トイレは諦め、踵を返す。
そして、ちょっとだけ彼女に興味が湧いた。
米田さんのお気に入り。謎めいた感じの彼女はきっと、女性からもてるタイプだ。

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