化粧室での会話

化粧室 仕事
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 花山さんが有給をがっつり取る分、シフトが私に回ってくるとばかり思っていたが、上司から何も言われず。
今週は、月曜週1勤務の午前だけが固定シフトなので、花山さんが出るはずの水曜と金曜の9時~17時に出れば、週3勤務で体的にもきつくないし、まあまあ稼げるかもという算段だったのだけれど。
実際、出社して今週のシフトを確認すると、黒川さんがフル勤務となっていた。

トイレから出ると、米田さんが丁度化粧直しをしていたので、何か話さなければ―と思いその件について話してみた。


「お疲れ様です。」


「あぁ、お疲れ様です。」


「あの・・花山さんが出られない日、私、出れます。来週とか、黒川さんもずっとシフト入っていると大変だと思いますし。」


「あ、大丈夫です。黒川さん、独身だし。時間に融通効くし。」


「でも・・、私も子どもがもう大きいので、大丈夫ですよ。」



 すると、鏡越しの米田さんがイラっとした表情になったような気がし、何か気に障ることを言ったのかもと焦る。


「花山さんがするはずの業務は、〆切厳守のものが多いんですね。なので黒川さんに出てもらいたいんです。」



「・・そうでしたか。分かりました。」


グサッときた。だが何も言い返せなかった。私では役不足ということ、それを真正面から突き付けられたのだ。

逃げるようにその場を離れ、自分のデスクに着く。
黒川さんは確かに、鬼の形相で難しそうな仕事をしている。


「芝生さん、いいですか。」


 少し経って、米田さんが私に声を掛けた。


「黒川さんにお願いしている、花山さんの仕事の一部です。やってみますか?」


「あ・・はい。」


 丁度、雑用やらやることが途切れ、退社時間までどう過ごそうか考えていたところだった。


「これは花山さんが普段30分でしている仕事です。今、11時なので・・昼の退社時間までにお願いします。」


 突然業務を振られ、困惑する。
ばーっと早口で説明を一通り受け、言われるがままにメモを取るが、頭に入って来ない。
その時点でメモを取ることに必死で、後からゆっくりメモを見ながら処理するしかないと諦める。
彼女が去り、今一度落ち着いてメモを見ながら作業の確認。
不明慮な点がいくつか出て来る。自分なりに解釈する。だが理解出来ない。時間は進む。仕方なく、米田さんに聞きに行く。彼女の仕事の手を止める。再度、説明を受ける。混乱する。だがもう一度聞きに行けず、どうにでもなれといった気持ちで無理やり作業を進める。果たしてこれで合っているのか?分からないけれどどうにかギリギリ正午に仕上げ、米田さん宛てにメール添付で送信する。

 彼女は課長と昼休みになっても打ち合わせのようなことをしていたので、そのまま帰宅した。
あれは、テストだったのだろうか?
それとも、私に言われたことだけしてろと釘を刺したのか。
どちらにせよ、嫌な気がした。

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