低レベルの人間

休憩スペース 仕事
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 花山さんが、自販機のコーヒーを奢ってくれた。
なんだか、同期という感じで心が温かくなる。
最初はちょっと苦手なタイプだなと思っていたのに、心が弱っている今、その存在に救われる。

「話って何?」

「あり得ないよ、あれは。芝生さんからのチャット、スクショしたの部長や課長に見せてたよ。こんなの送られましたって。」

「え?」

 正直、耳を疑った。
そこまでする?と。
第一印象ー、面接の時に出会った彼女。年下だけれどバリバリ仕事が出来そうな、頼りがいのある感じだった彼女。

「でさ、仕事もロクに出来ない癖に、こういうところでいちいち反発して来るんですよねーって言ってた。もうあの人と直接関わりたくないって言ってたよ~いい大人なのにね。ちょっと笑っちゃった。」

 笑えない、私は。
花山さんは、外野の分際で楽しんでいるのだろう。
つい数分前、同期の温かさが身に沁みると思い有難がっていた自分がおめでたい。
私の顔色が青ざめていくのを見ることに成功した彼女は、満足気な表情でコーヒーを啜った。

「人として、レベル低いよね~気にすることないよ。いいじゃん、口利きたくないって思われた方が。逆にあの人と関わらなくて済むんだもん。むしろ避けられてラッキー的な。」

 本当にそう思ってる?
自分はちゃっかり安全圏にいるから言える台詞だ。
聞き返したい衝動を抑え、引き攣り笑いを返す。
コーヒーの味は、ミルクが入っているはずなのに苦く、でも舌に妙な甘ったるさが残る。
まるで、花山さんそのものという感じに。

レベルってなんだろう。
米田さんから見れば、私は低レベルで。
花山さんから見れば、きっとどちらもそうなんだろう。
黒川さんは、きっと全員を、低レベルに見ている。

そういう場に身を置いている自分。
結局はー。
高尚な人間に自分がなるしかないのだろう。
自分を磨き続けて入れば、おのずと、そういう環境に辿り着く。
そこに辿り着けていない時点で、それは、自分のレベルがその程度ということなんだ。



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