最後の発表日

パソコン
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 長かった受験生活。
最後の発表日。
それまでの発表が全落ちで、最後の最後でという希望を残しつつ、だが一方で無理だろうなという諦めの気持ち。

 発表時間になってもリビングでスマホをだらだら見ている子に、夫がしびれを切らして尋ねた。

「発表だろ?結果、見ないの?」

「あぁ、そうか。」

 まるで今言われて気付いたかのように、自室からノートPCを持って来た子。
これまで一人でオンライン発表を見ていたのに、最後はなぜか家族の前で。いったいどんな心境なのか?やけに落ち着いているようにも見えたし、他人事のようにも見えた。

大学の発表サイトにログインをする。何度かパスワードの入力ミス。
隣にいる夫の、唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
これで、終わる。これで決まる。
密にお守りを握りしめ、祈るような気持ちで子の背中を見つめる。


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不合格

不合格

不合格



 本命だったので、いくつか学部学科を変えて受けていた。なので、結果もその個数分。
情け容赦ない、その画面。
だが、そうだろうなと半ば思っていたので驚きもなく、むしろすんなりとその結果を受け止めた。
子はどうだろうか、夫はどうだろうか・・


「はい、終わり。」


 画面のスクロールすらせず、たった数秒で閉じるボタンを押してPCをシャットダウンした子。
ショックを受けている風でもなく、むしろ「これが私の実力。パパ、ママ、分かったでしょ?」と、そんな風にさっぱりとした空気。

「お疲れ。よく頑張ったよ。うん。」

 何も言えない私の前に、夫が口を開いた。
子は、それを聞いているのかいないのか、だがなんてことない風にそそくさと自室へ。
しばらく部屋から出て来なかった。一人になりたい、そんな心境なのだろう。
もう、小さな子どもではない。親の前で見せない顔がたくさんある。
夫と二人きりになり、彼の言葉を待った。無言が続き、私がその空気を破ろうとすると、一言。


「花子はよく頑張ったよ。うん、頑張った。俺はちょっと出て来る。あなたも、お疲れ。」


 夫なりにショックだったのだろう。
自分に言い聞かせるように、何度も子は頑張ったのだと繰り返していた。子を咎めたり追い詰めるようなことは一切言わず、受験前の強引な父親はなりを潜め、優しい言葉を置いて、静かに家を出て行った。
決して手放しで喜べない結果となった受験だけれど。
私達家族にとって何か大事なものが生まれた、そんなきっかけをくれた日々だった。

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