回る回らない、羞恥

回転寿司 家族
スポンサーリンク


 義父は、まだまだ話し足り無さそうにしていたものの、だがさすがに体力が落ちているようでちょっとの移動でも疲労感が透けて見えた。
笑顔で別れた後、帰り際に義母からのお誘い。

「こういう機会でもないとあれだし、皆でご飯を食べて帰りましょう。なんだか私、疲れたわ。」

 嫌な予感はしていたけれど、そう来たか・・
家族水入らずどころか、三女を交えての食事。気が重いけれど、仕方がない。

「何食べる?鰻とか?」

「お寿司がいいわ~」

「ママが食べたいものでいいよね、ね?」


 三女が、私達に同意を求める。私は正直何を食べてもいいから、早く帰りたい。むしろラーメンでもいいくらいだ。だが義母が寿司希望というので、目に付いた回転寿司へ。
店内に入ると、義母も三女もきょろきょろ落ち着かないように辺りを見回している。

「ねえ、ここ大丈夫?」

 三女が夫に耳打ちする。
夫がうざったい感じで何やらこそこそ言い返している。
テーブル席に着き、お品書きを開く義母は開口一番、

「ここ、安すぎるわね。本物なのかしら?このネギトロとか、冷凍のチューブとかじゃないわよね。」

「ママ、このレーンから取るのは怖いからやめて、オーダーしよう。だってほら、回ってるお寿司はなんだか干からびてまずそうだもん。」

 三女が義母を窘めるように、回転寿司の極意を伝える。

「私、サーモン!」

 子が、大好物のサーモンをタッチパネルで一気に3皿注文した。夫もまぐろやエビなど、好物を注文していく。義母も三女も仕方なしといった感じで注文した。
注文後、ものの1分も経たないうちに、軽快な音楽が鳴り響き、ものすごいスピードで子のサーモン3皿が私達のテーブル席に到着。

「早過ぎるわね。ちょっとこれちゃんと職人さんが握ってくれてるのかしら?」

 義母が眉間にしわを寄せつつ、疑わしい表情で尋ねる。

「バイトに決まってるじゃん。私の友達もここじゃないけど、回転寿司でバイトしてるよ~」

 子はあっけらかんと言いながら、嬉しそうにサーモン寿司を頬張った。
次いで、夫や義母や三女の皿が到着し、お皿はちゃんと洗っているのか、なんだか汚れている気がするだとか、最近ニュースになった迷惑ユーチューバーの話題とか、今食べている時に思い出したくもないあれこれだったり、いつも2人が行く近所の高級寿司店と比較し、散々文句を言いながらなかなか箸が進まない彼女達を前に夫の顔も険しくなっていく。
以前の夫だったら、絶対連れてこない場所。いや、夫単体でも、回らない寿司じゃないと寿司じゃないと言っていたのに。自分がお金を出すことは承知の上で、ここが精一杯の我が家の現状なのだろう。

 私は、いかにまぐろに卵、それにとろサーモンを食べた。子はサーモンばかりで、チーズやオニオン、アボカドが乗ったサーモンや穴子やいくら、それにやっぱり海老もマスト。

「ご馳走さま。もういいわ。」

 義母の目の前には、空いた皿が2皿だけ。なのにもう食べないという。
明らかに、この店だから要らないといった態度。同じく三女も箸を置いた。

「カズ、悪いんだけど。帰りに成城石井寄ってくれない?お弁当買ってく。」

「は?」

 夫が苛立つが、三女はどこ吹く風。

「回転寿司なんて、学生の頃に友達に付き合って食べた以来だよ。やっぱり苦手。ママもそうだよね?っていうか。ママは回らないお寿司しか行かないもの。カズ、なんか変わったね。仕事、やっぱきついっての本当?」

「車が入りやすい店がここしかなかったんだから仕方がないだろう!?ったく、なんだよ。子どもじゃあるまいし我儘が過ぎるんだよ!」

「何よ、その口の利き方!あんた、ちょっとおかしいんじゃない?私は心配してるの!お姉ちゃん達だって心配してたわよ。あんたの仕事、赤字続きでもう長くないんじゃないかって・・」

「花子の前でやめろよ!」

「ちょっとちょっと、こんなところでやめて・・」

 義母が2人を窘める。
だがその言い争いの原因を作ったのは、あんたじゃないかと私は思う。黙って食べていてくれたらこんな空気にならなかった。
気まずいまま、会計に並ぶ夫の前で義母が、

「ちょっと、いいわよ。私が出すわ。あなた、運転してくれたじゃない、タクシー代だと思って。」

 結局、今回の支払いは義母がしてくれた。
お礼を言いつつ、殆ど無言を貫いた子が、ぽつり。

「マジ、はずかしかったわ。」

 いい大人が、みっともない。
お嬢様育ちの義母だと言うけれど、本当の意味での品位に欠ける。











タイトルとURLをコピーしました