子どもステータス

ホール 家族
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 あいちゃんの演奏は確かに素晴らしかった。
才能ー、強みがあることは今の時代において有利だ。
ただ、子どもの才能をさも自分の才能だと言わんばかりの次女には閉口する。
親も人間だから、自分の産んだ我が子が可愛いのは勿論だし、それを自慢したい気持ちは分かるのだけれど、度が行き過ぎているとうんざりするのだ。

ちょっと前まで、彼女は息子の学歴自慢をしていた。
何かにつけ、息子が入った高校名を出し、普段の会話でも「~の学校はね、」で済むところを「〇〇高校はね、」と高校名まで入れないと気が済まない。高校名を出さずとも知っている親族に対してそうなのだから、他人に対してはもっとそれが酷かっただろうし、鼻に付いたと思う。

それが一転、今度はあいちゃん。
息子は名門校に入学したはいいけれど、周りも優れているものだからすぐに学校の中では埋まってしまった。
自慢は、比較から発生する。
中学時代は周囲の子ども達と比べて抜きんでていた学力も、レベルの高い高校に入学すれば平均よりやや下という彼女にとっては残念なステータスとなる。
しかし、あいちゃんは違う。
努力もしているだろうけれど、才能の世界で実力を発揮しているのだ。
私達がどう頑張っても辿り着けない場所ー、まるで次女は自分がその場所に辿り着いたかのごとく、はしゃいで騒いで周囲を巻き込み、興奮している。
それに興味の無い人間がいることすら想像しない。
次女と実母がふいに重なる。
あぁ、私が彼女にこんなにも嫌悪を抱く理由はこれかーと腑に落ちる。


 食事会でも、あいちゃんを持ち上げる会話ばかり。
それに賛同する義両親。
長女一家も妹家族の浮足立った状況を煽るように褒め称えている。
ふと、隣に座っている夫の口数が少ないことに気付く。
あぁ、彼も私と同じ気持ちなのかなと、普段は感じない夫婦の一体感。
美味しいはずの高級料理よりも、家で食べる納豆ご飯を恋しく思うのだ。
一刻も早く、我が子がいる家に戻りたい。
私達は二次会しようという彼らの誘いを断り、家路へと急いだ。


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