N恵と私、大人になっても比較される。
本人のことだけではなく、その周辺環境ー夫の仕事や子ども達の学歴諸々。
それが嫌で嫌で仕方が無かったのだけれど、先日の義実家訪問で我が子が同じ様な扱いを受けているのを見て何ともやり切れない気持ちになった。
あいちゃんは叔母の私から見ても礼儀正しく、ピアノだけではなく学力も高い。聞くところによると運動神経も良く、バスケが得意。友達も多く、義姉の自慢の娘なのだ。
「これ、あいが作ったの~」
持ち寄りというので、私も一生懸命お節的な和のおかずを何品か作って来たのだけれど、やられたーと思った。
私も子と一緒に作れば良かった。
あいちゃんは料理が趣味なのだと言う。気分転換にケーキを作ったりもするらしい。
「ミートローフ?すごい!私、こんなの作れないよー」
三女が感嘆の声。そりゃあそうだろう。同居している不自由な親がいても、嫁の私に作り置きをさせていたくらいなのだから。彼女が料理をしているところなんて見たことがない。
焼きそばくらいなら作っていたかもしれないけれど。
「断面、綺麗だね。ソースも美味しい!!」
皆、とにかくあいちゃんの料理を褒めた。確かにそれは美味しかったし派手だった。
私の作って来た料理なんて端っこに追いやられ、ただの副菜状態。
それは別に良いのだけれど、この一言が本当に余計だった。
「花子もあいちゃん見習いなさいよー!料理とかしないの?」
デリカシーの無い長女の一言に、子の表情が一瞬曇ったのを見逃さない。
そして、更に三女や義父まで、
「顔ばっかいじってないで、何かこれってもの見付けないと。志望校は決まったの?何かやりたいこととかないの?」
始まった。
義姉らにとってはどちらも可愛い姪なのだろうが、血が繋がっている分、遠慮が無い。
子は、うんざりした顔をしつつ、スマホに手をやる。
「食事中にスマホはやめなさいよ。家でもそうなの?」
次女が私のしつけがさも悪いかのように尋ねる。
そんな彼女の意地悪に太刀打ち出来るはずもなく愛想笑いをしていたのだが、さすがにイラっとし、
「パパもやってるよ。」
私の口から出るはずだった言葉を、子が代わりに出した。
酔っ払っている夫や男達は、そんなこちらの空気の重さなんて露知らず。
次女は言い返されても尚、
「そういうことじゃないでしょ。マナーだよ。」
「大人達だって、酔っ払って人に絡んで気分悪くさせて、それはいいの?」
子がいよいよ牙をむいた。本来、母親の私がその口の利き方を叱るべきところなのだろうが、我が子の肩を持たなくて誰が持つーという思いからなかなか実行出来ずにいた。
ふとあいちゃんの姿が視界に入り、その戸惑った居心地の悪そうな表情に共感をおぼえる。
自分の母親が恥ずかしいーそんな顔。
私もあんな顔、良くしていた子ども時代。
自慢の娘にとって、自慢の親でありたいーそうは思えないのだろうか。