ホテルランチ

料理 家族
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 本採用になったのならお祝い兼ねてランチしようとN恵に誘われたのは、都内のホテルランチ。
5000円弱もする。
パートの日給だなーと思いながらも、こんなに頑張った3か月、少しは自分の贅沢に使っても良いのではないかと思いOKした。

オフィスカジュアルそのままの恰好で待ち合わせ場所に行くと、今の仕事をしてから初めて会うN恵は私を見るなり、

「なんか雰囲気変わったね。垢抜けた。いい感じ。」

 そんな風に褒められるとは思っていなかったので驚いた。
N恵の方は、相変わらず溌剌としており、YouTubeで観たまんまのワーママ生活を大変ならがも充実して過ごしているようだ。

折角だからーと最初のドリンクはアルコール。
2人共、スパークリングワインをオーダーした。1杯のつもりが、料理も美味しいし互いの近況報告や伯母や実母など親戚の話題で盛り上がるにつれて、2杯、3杯と続いてほろ酔い状態。

「それにしても、仕事、良かったね。年齢的にも正直きついんじゃないかって思ってたから。」

 N恵の本音だ。こうして無事にオフィスワークが決まった従姉妹に言える言葉。
そんな彼女の言葉によって、内に秘めていた悩みを打ち明け辛くなってしまった。


「本当に運が良かった。職場も綺麗だし、ほら見て。」

 
 スマホで職場のホームページを見せた。
N恵は身を乗り出すように、私のスマホを覗き込んだ。


「え!すごいー!いいなぁ!うちなんて狭い薬局にたちんぼだからさ。こういう綺麗なオフィスで働くの憧れる!」


「仕事はまぁ難しいけど、人間関係には恵まれているしスキルアップ出来ると思えばね。お金を貰って色々勉強出来るなんて、この年でラッキーだよ。」


「事務だよね?」


「うーん、ただの事務じゃないんだよね。システム作ってる職場の事務だから、専門的なこととか色々勉強しないとならなくて大変。」


「すご!じゃあ、ここで頑張れば転職にも有利じゃん!いずれ花子が巣立てば正社員の道も考えているんでしょう?」


「まあね。そうなればいいけど。」

「続けられそう?」


「・・うん、旦那の仕事次第かな。もしかしたら人が辞めるかもしれなくて、そうなると手伝わないとならなくなるかもだから。」



 つらつらと、思い付きの台詞が出る。
そしてまた自分ではない他人のせいにしようとしている自分。
私は続けたいけれどー家族の為に辞めなくてはならなかったーという嘘の逃げ道を準備しておくのだ。

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