「何かやることはありませんか?」
事務パートでの仕事。毎朝、米田さんや木佐貫さんにお伺いを立てる。
週一となってしまったことで、ルーティンワークを任されなくなった。
毎日やらなければならない業務、売上管理だとか勤怠管理だとか。そういった覚えれば私でもなんとか出来そうだった仕事も、今や後から入社した黒川さん担当の業務となっている。
いつの間に、黒川さんは週3で入っているし、花山さんはやる気があるのかないのか、少し前まで社員並みに業務を押し付けられそうになったことに怒りをおぼえて直談判したのか、適度な業務量になって落ち着きを見せている。
しかも余裕があるのか、暇になると条件付きで上司にお伺いを立てるのだ。
「定時までで良ければ、やりますよ。」
しかし、この台詞。
余程、能力に自信があるのだろう。私が同じことを言ったら、上から目線で何言っちゃってんの?与えられた仕事をミスなくやって!となるだろう。
「落ち着いたら声掛けるので、ちょっと待ってて下さい。」
米田さんからそう指示されるけれど、周囲が集中してパソコンを叩く中、デスクでぼーっとただ座っていることに耐えられない。
なので、せめて電話を取ろうと意気込むけれど、ピカッと受信ランプが点いた途端、黒川さんが取るのだ。自分のルーティンに集中してくれたらいいのに・・
悲しいことに、私も一応参戦するのだが、悪目立ちしてしまう。
ガチャっと電話を取る、先に取られてしまい受話器を気まずく思いながら元に戻す。
その繰り返し。
「黒ちゃん、取るの早いよね(笑)」
隣の花山さんが、私を見て笑う。気遣ってくれているようにも笑われているようにも思う。
私はそれに愛想笑いを返す。
タイミングを見て、今度は木佐貫さんにお伺いを立てる。
「今はいいです。やることないなら・・あの辺、片しておいてくれます?」
通路まで飛び出た段ボールの山。それに古紙。
それをまとめておいてくれというのだ。
そんな雑用でも、何もせずデスクに座っているだけよりまだまし。
皆より離れた場所で黙々と片付ける。
ふっとフロアを見ると、お茶を飲み仕事をしながら、何やら皆が談笑しており複雑な気持ちになる。
お得意の蚊帳の外。
どこへ行っても、こんな状況になってしまうのだ。