借金

海 生活
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 自営の経営状態について、ぼんやりとしか分からず常に不安を抱えていた。
何度も何度も、それは夫が会社員だった頃も給料や貯金を教えてくれず、そういう話になるとはぐらかされたり苛々されたり。
何とか楽観的に、どうにかなるさと後回しにしていた私にも責任はあるけれど、事態は深刻。
夫からパート代を聞かれ、そしてそれを全額生活費に入れてくれと言われた時、いよいよまずい状況なのだと馬鹿な私でも気付かざるを得なかった。

「今、パート代はどれくらい貰ってる?」

 素直に明細を見せた。
10万にも届かない金額に夫は深くため息をつきながらも、


「しばらくこっちが軌道に乗るまで、これでやり繰りして欲しい。家賃とか光熱費はこれまで通り俺の口座引き落としでいいから。」


 私は自分の老後の為に、パート代の半分は積立NISAや実両親へのちょっとした仕送りだったり自分の身の回りのことに使っていたのに。
パート代すべてをまるっと生活費に充てることになれば、この稼ぎでは不安。
だがもしこれ以上働いたとしても、今の夫の顔色を見れば、今度は自営の資金に回して欲しいと言われかねない。

夫いわく、やはり今年の資格試験に落ちたことで当初の計画が狂い始めているのだそうだ。
そして、薄々勘づきながらも恐ろしく確かめられなかった借金について。
サラ金などに借入はしていないけれど、やはり義両親に金を借りていたことが分かった。
そういう事情がありながらも義実家訪問していた自分が惨めで恥ずかしい。
義父は、銀行に借りれば利子もあるし連帯保証人になるくらいなら俺が出すと言ってくれたそうだけれど、そのままその言葉に甘えて老々介護中の親に甘える夫が情けなく、いつまで経ってもこの家族の中で末っ子の可愛い長男なのだと思い知る。
夫が自営を始めてから義実家訪問の時や電話で、遠回しになんだか嫌味らしきことを義姉らが私に向けていたことを思い出す。

ー芝生さんは何も知らないみたいだけど、色々あるのよ。

ー芝生さんはカズのことどこまで知ってるの?何も知りませんとか、有り得ないからちゃんと夫婦で話し合いなさいよ。

ーパパやママはこれからお金がいくらあっても必要な時なのに、この家だっていずれは売りに出さないとかもね。




 そういうことだったのか。
どう返済していくのか、今は軌道に乗ったらーということになっているらしいのだが、軌道っていつ?それは本当に乗れるの?
一気に不安が押し寄せて来た。
親にであっても借金は借金。夫はもう少し考えがある人だと思っていたのに。

「なんで一言相談してくれなかったの?」

「あなたに相談したところで、金の調達なんて無理だろう?」


  それだけ言い捨てると、プイッと自室に籠りそのまま寝てしまった。
子の大学資金は?
老後資金よりもまずはそれだ。
塾代だってこれからもっと百万単位で掛かるだろうけれど、それも辞めさせる?
頭が痛い。
まずは義父に電話で何も知らなかったことを謝罪しなくては。






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