ドキドキしながら出社した事務パート。
皆の視線が怖く、伏し目がちで職場へ。
「おはようございます。」
フロアに入り、上司や同僚に挨拶。
まだ朝礼前なのでざわざわしており、仕事をしている人もいれば、スタバ片手に雑談している人も。
花山さんは先に席についており、スマホを眺めていた。
ふっと米田さんと目が合い、すぐに逸らされた。
続いて、黒田さんがこちらを見ている気がし、意識しつつ目を合わせないよう気を遣う。
「おはよー」
デスクに座ると、花山さんがスマホに目を向けたまま挨拶。私も返す。
何か言われるかもーとドキドキしながらPCを立ち上げ、メールを開く。
しかし、私個人宛てメールを見たら、髪型がどうとかどうでも良くなった。
先日、処理した業務について木佐貫さんよりダメ出し。
添付したファイルの内容は合っているはずだけどーと思うが、内容ではなく体裁についてだった。
ー体裁を整えて提出するのは、常識ですよ。
棘のある言い方。
それに、なぜかそのメールのCCに課長や米田さんらの名も入っている。
彼女から個別に依頼された業務で、こちらに振った時には入っていなかったCC。
注意をするのに、なぜ上司や先輩の宛先まで入れたのか?彼女の底意地の悪さを見た気がした。
それに、体裁がどうのこうの、内容が合っているのならそっちで修正してくれたらいいのに。
わざわざ突き返して修正される時間。メールを送りまた受ける時間、無駄ではないか?
だが、そんな反発は私の中で静かに消化するしかない。仕事が出来ないパートは自分の意見なんて言う権利などない。
ぐっと堪え、言われるがままに体裁を整えて再提出。それが終わると、途端に仕事が無くなった。
花山さんや黒田さんは、既に自分の仕事を持っているのでこういう暇な時期は処理速度を調整しながらといった感じ。
私は明らかに何もないことが傍から見れば分かり過ぎるので、何かやることはありませんか?とお伺いを立てなくてはならない。
「何か、やることはありませんか?」
米田さんに声を掛ける。
ちらっと視線が私の髪型に行くのが分かるが何も言わない。
奇妙な沈黙と気まずさ。
「あそこにある昨年度の書類、片付けておいてくれますか。」
今じゃなくても良い仕事。
誰でも出来る簡単な単純作業。
心もとない襟足に皆の視線を感じながら、今日も黙々と働いた。