1000円を稼ぐということ

自転車 わたし
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 期待していたパート面接が落ち、いよいよ焦っている。
夫に告げると、あぁやっぱりという反応。

「あんたは甘いんだよ。だいたい無資格でOKってさ、じゃあ有資格者も面接に来たらどっちとる?これっていう何かがあれば別だけど。簿記だって結局取れなかっただろう?今の事務パートだって、誰にでも出来る仕事してるんだろう?向上心ってもんがないんだよ・・」


 うだうだ説教され、うんざりとした。
だが、夫の言うことも一理ある。自分を高めるースキルを磨く。そういった面倒なことを避け続けた結果がコレだ。
今やれることー。まるで夏日のような暑さの中、ポスティングをする。今日はそんな気分じゃない、涼しい部屋でアイスコーヒーでも飲んでいたい。
だが、仕方がない。1000円稼ぐ為に時間の切り売りをする。

「ちょっと、あんた!要らないんだけど!!」

 新規の戸建てポストにチラシを入れた途端、家主が出て来てクレーム。
申し訳ありません!とチラシを回収しその場を去る。
赤丸をして、投函禁止の報告をしなくてはならない。
なぜかこの日はそんな家が数件もあり、その度にビクビクしながら謝罪をし、なんて人迷惑な仕事をしているのだろうと自分の存在価値まで下げられたようで気が滅入る。
感謝される仕事、人を癒す仕事、組織をスムーズに回す仕事、会社の利益を上げる仕事ーそんな確かな成果がある仕事に対し、このチラシをポストに投函する仕事に虚無感をおぼえる。
私だって、これを受け取ったらすぐにゴミ箱に捨てる、そんな紙屑同然のものを一枚いくらでポスティングすることに何の意味があるのだろう。

 1000円分ポスティングしようと意気込んだものの、萎えた気持ちは戻らない。
多分、800円ちょっとのポスティングでもう自宅に戻って来てしまった。
それでも午前中は潰れ、家事もまだ中途半端な家に戻ると、シンクにたまった朝食を食べた後の皿にげんなりする。

1000円稼ぐこと。
これを難しく感じる私は、きっと底辺の人間なのだろう。
若いうちから勉強をし、苦労をし、いや結婚して子どもを産んでからだってそのチャンスはあったのだ。夫の言う通り、流されず自分なりの目標を持ち学び続けていれば、きっと同じ1000円を稼ぐにしても遣り甲斐があったり、またもっと要領良く稼ぐことが出来たのだ。

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