米田さんと去年から会話らしい会話をせずに来たけれど、ついに、こちらから話し掛けなければならない状況がやって来た。
パート内の申し送りで、黒川さんと花山さんの2人から引き継いだ業務についての進捗と、ちょっとした質問だ。
昨日出勤だった花山さんが本来は対応することになっていたのだが、米田さんは終日社外で、木佐貫さんもお子さんが熱を出して出社したと思ったらすぐ早退だったとメールに書いてあった。
なので、今日出勤の私が米田さんに対応することになった。黒川さんは午前休・・
何度かタイミングを見計らうが、怖い。とにかく、怖い。
もう後回しにして、黒川さんに引き継ごうか。
だが、明らかに米田さんを避けていることが丸分かりになり、修復不可能になってしまうのも怖い。
ふと彼女を見ると、課長と談笑している。
課長が他の社員に話し掛けられ、会話は中断された。
今だー
「すみません、今、よろしいでしょうか?」
「はい!?」
やっぱり威圧的。絶対に嫌われている。怖い怖い怖い。
「あの・・花山さんに頼まれたことでよく分からないことがあって・・あ、黒川さんからもこの業務についてのー・・えっと・・つまり2人から引き継いだことで米田さんが頼んでくれた仕事なんだけど・・◎△◇・・・」
もはや、会話にならない。途中でなぜかため口のようなものも混ざり、失礼なことになっている。
自分が何を伝えようとしているのか分からない。
米田さんの眉間にしわが寄る。そうなると更に恐怖と焦り、それに加えておかしなことを口走ってしまう。
「え?何が言いたいの?」
「ごめんなさい。分かり辛くて。えっと・・」
「・・・」
「ちょっと整理してからもう一度来ます。」
頭がぐちゃぐちゃで、怖くて委縮し過ぎてしまう。一回りも年下の子だが、あんな風に強めに出られると年齢など関係ない。ただただ怖い人を前に、委縮と緊張で喉の奥が硬直し、すんなりと言葉が出ない。頭の中も真っ白。
伝えること、質問事項をメモパットに書き、出直した。
「あの・・何度も申し訳ありません。えっと・・」
「?」
「まず、OO会社の請求書の件ですが・・」
箇条書きをしたメモを見ながら、つっかえつっかえ伝える。恐怖で声も震える。耳に入る自分の声がまるで他人のように。
「よく分からないんで、そのメモ貰っていいですか?急ぎですか?」
「いえ、多分急ぎではないかと。」
「じゃあ、午後に、黒川さんにも聞いてみるんで。」
つっけんどんに返された。
やっぱり怖い。なるべく関わりたくない。
