夫の学生時代

ビーチバレーネット
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 夫が学生時代の友人らとキャンプに出掛けた夜。
ワインを飲みながら、勝手に夫の自室へ入り、写真の入った缶を引っ張り出した。
卒業アルバムの横に置かれた、お菓子の缶。
缶の中に、大量の写真が入っている。
これまで聞いたこともないけれど、もしかしたら元カノの写真もあるのかもしれない。
私達は、互いに過去の恋愛遍歴を語り合ったことなどない。
夫は、私が恋愛未経験だと信じているし、だからきっと結婚出来たのだろう。
実際は、私の中にど真ん中の元彼がいるのだけれど。
夫は、古着やおさがりが大嫌いなのだ。それを知っていたら、きっと今の私達はないだろうし、子にだって会えなかった。

対し、夫はああ見えて私と出会う前はそれなりに遊んでいたようだ。
それは、夫の学生時代の友人らとそんな話題になった時、また義姉らがまだ新婚時代の私に向かってわざわざ要らない情報をくれたりもしたことで知った。
二桁までにはいかないまでも、片手以上の付き合いはあったらしい。
学生時代に遡り、クラスメイトだったりバイト先の先輩だったり。
社会人になってからの数年は、仕事が忙し過ぎて結婚するかもーと義実家のイベントごとに顔を出すまで親密だった彼女と破局してしまったことも義姉がご丁寧に教えてくれた。


 缶の蓋を開け、中の写真を取り出す。
古い写真。まだデジカメが流行り出した頃の画素の荒さは、今だと「エモい」と言われるに違いない。
ジャージに身を包んだ夫は、今よりだいぶスリムで筋肉質。
仲間と楽しそうにふざけたポーズを取っている。
文化祭や体育祭、その中心メンバー達と共に楽しそうな学生時代を送っていたことが見て分かる。
部活も体育会系に入っており、その仲間達との合宿写真があったりして。
大学時代の写真では、サークルでの飲み会、砂浜でビーチバレーをしてはしゃいでいる夫の姿。
ゼミでの討論会や教授らとの写真など真面目な一面も。
バイト仲間だろうか。スノボーをしている写真まで。
だが、その中に特定の女性とうつっている写真は一枚も無かった。
どれもこれも、男女大人数で和気藹々としている写真。


 夫の性格は、この頃、どうだったのだろう。
ふと思う。私と出会った時、既に神経質でインテリで、威圧的な雰囲気をまとっていたけれど。
この写真の中の彼とどうしても結びつかない。
新卒で、金融系の企業に勤めて変わったのだろうか。
正直、モラハラ臭漂う夫とこの写真の中の人物とが結びつかない。


 輝いていた頃の自分に再会する。
昔の仲間と会う時間はきっと、現実が厳しければ厳しい程、その光が眩し過ぎるだろう。

きっちり元の順番に写真を重ねて缶の中に仕舞う。
パンドラの箱ではなかったけれど、それをどこかで願っている私もいた。
この感情の正体が、自分でも分からない。




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