「社長も来るし、どんな服装で行ったらいいですかぁ?」
花山さんが米田さんに尋ねており、フロアに二人きりになったタイミングでどういうことか聞いてみた。
「あれ?聞いてない?来週、ランチ会議があるんだって。年度末の送別会も兼ねて。偉い人達も来るから緊張するよね~」
私は週1パートから午前だけの週2パートとなったのだが、こういう聞いていない話が耳に入って来た時、いまだ社員からしたら空気のように扱われている気がする。
同期の花山さんは、もうすっかりこの職場に馴染んでいるというのに。
何も言われてないし、こちらから聞いて実は私は頭数に入っていないのだとしたら図々しく思われるし・・そんな私の心を読み取ったのか、花山さんが、
「芝生さんも来るよね?ホテルのランチでコース料理みたいだよ。美味しいもの食べて帰りなよ。」
気軽に言うけれど、声が掛かっていないのだから何とも言えない。
打ち合わせから米田さん達が戻って来たタイミングで花山さんが木佐貫さんに、
「来週のランチ会議って、芝生さんも行っていいんですよね?」
余計なことをーと思ったのと同時に、木佐貫さんは困惑したように部長に聞いてくると言いその場を離れた。
もしかしたら私は頭数に入っていないのかもー部長の席で2人がこそこそ話しつつこちらに視線を向けているのが痛い程分かる。それをいちいち実況中継して来る花山さんにイラっとする。
「こっち見てる、なんだろうね。まさか芝生さんは頭数に入って無かったとか‥あり得ないよね?」
頭数に入ってなくていい。いくら豪華な料理を前にしても、社長ら役員のいる前で食べる食事会なんて疲れるだけ。しかも、表向きは「会議」となっている。だったら自宅で気楽に納豆ご飯でも食べている方がいい。
「あ、来た来た。」
木佐貫さんが戻って来て、私に向かって、
「芝生さんも来て下さいね。他部署の人達との懇親会も兼ねて。新年会も来られなかったし。」
なんだか毎週のように憂鬱な予定が入る気がする。
午前勤務だけれど、その日は一日勤務でタダ働きーそんな感覚すらおぼえる。
隣で呑気に服装のことばかり悩んでいる花山さんが羨ましい。