マラソン大会

マラソン
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 子の高校で、マラソン大会が行われた。
私はPTA広報として参加したのだが、肝心の我が子はまだ病み上がりなので見学。
他所の子の写真撮影をしに行っただけという、なんともメリットが無い活動だった。

PTAは誰もがやりたくないし、面倒だ。
自腹で交通費を支払い、ほぼ一日、愛想笑いで活動し、体力の消耗以上に気疲れを伴う。
この日はやるべきことが明確で、しかも担当がきちんと与えられていたので、カメラ担当の人と協力し、各ポジションで撮影という流れ。
私は、1年の保護者と組んで活動した。
以前の集まりで2年の親達とワイワイしていた人なので、ここら地元の人なのかもしれない。

「寒いですね~」

「みんな、頑張ってますよね。」

 互いに当たり障りのない会話。
まだ今年と来年は共に活動する保護者なので、少しでも距離を縮めたくて、子どものクラスを聞いてみたり、なんとか場を繋げようと会話の糸口を探す。


「雪、溶けて良かったですよね。」

「中止になった方が娘は喜んだかもしれないですけど。」

「うちは体調不良で、今日、見学なんです。」

「えー、それは大変。」

「・・・」


 こういう時、雑談力のある人になりたいと思う。
ずっと先のポジションで組んでいる2人は、楽しそうに会話をしている。
私達も傍目から見たら、楽しそうに見えるだろうか。
相手は、私と組むことになって、ハズレだったと思ってはいないだろうか。
私なんかと組むことになって、すみません!と心の中で詫びてしまう。


「高校生は、元気ですね。」


「本当に。」


「・・・」


 辛い。ネタが思い付かない。
なので、撮影に集中する振りで、ファインダーを覗き込む。


「Aちゃん!頑張って!!」


 突然、彼女が大声をあげた。
続けざまに、叫ぶ。


「ほら、B子!気合!抜かれるよ!」

 
 物静かだと思っていた人が、突然、大声で叫んだので驚いた。
それに、その声を受けた子ども達が、笑顔で手を振り返す。


「お子さん、ですか?」


「あぁ、うちの子の友達です。幼馴染なんです。」


 撮影をしながら、大声を張り上げる彼女。PTA活動を大いに楽しんでいる。
私は、その光景を隣で微笑ましく眺めていた。


生徒達がすべて通り過ぎたところで、沈黙に耐え切れず、


「これからもよろしくお願いします。あの・・ライン、交換してもらってもいいですか?」


 勇気を振り絞り、お願いした。
彼女は少しの間の後、


「あ、えっと、1年のグループラインがありますよね?」


「あ、そうでした。そうでした。」


 またやってしまった、コミュ障全開ではないか。
撮影が終わり、片付けなど本部の手伝いをして解散。
先程まで一緒だった彼女は、2年の保護者達と盛り上がり、とてもじゃないが入っていく余地はない。
彼女の名前は首から下げている名札でチェックしたけれど、多分、向こうは私の名前なんて知らないままだと思う。

何の収穫もないまま終えるのも勿体ないと思い、子のクラスを探す。
見学していた我が子は、友達と和気藹々、楽しそうにしていた。
その様子が見れただけ、よしとする。
子どもが高校生になり、ようやく保護者付き合いについて引き摺ることなく割り切れるようになった。
仕事を始め、そちらの悩みの大きさに心は支配されているお陰ともいえるのだけれど。







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