ご近所トラブル

猫 生活
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「おい、猫の声が聞こえないか!?」


 ついに、夫がお隣さんの猫の存在に気付いてしまった。
ここ最近、煙草を吸う回数が増えたので、時間の問題だと思っていたが。


「こんなところまで野良猫が上がって来れるはずはない。どっかで飼ってるにきまってる!」


 我が家は割と上階なので、ここまで猫が自力で上がってくる可能性は低い。
となると、飼い猫だと言う夫の持論は間違いではない。


「ほら!ほら!聞こえないか!?」


 バルコニーを開けて、私にも声を聞かせようとする夫。
すべて分かっていて、素知らぬ振りをするのも骨が折れる。


「うん。そうかな?猫のテレビじゃない?」


 苦しい返しをするが、聞く耳を持たない夫。
最近また荒れ気味で、食欲が無い代わりに酒と煙草が増えた。
風呂場での雄叫びも。犬塚さんとまた揉めたのだろうか。
常に苛々しているようでもあり、その当たり所を見付けたくて仕方がない。


「おい!管理会社の電話番号!!」


 面倒なことになった。
しかし、言われるがまま電話番号を渡す。
夫は意気揚々と苦情電話を管理会社に入れた。


「猫の声がずっと聞こえるんです!はい。OO号棟のものです!調査して貰えませんか?」


 電話を切り、少しスカッとしたような顔の夫。


「こっちの名前を聞かれたよ。言う訳ないじゃんな。そんなの匿名だよ。ったく、ここはペット禁止なのに動物飼うなんて非常識にも程がある!犯人見付けたら、すぐ退去して貰わないとな!!」



 退去?
まずいことになった。
針金さんに先回りで伝える方がいいのか?猫を隠してくださいと?
夫がクレームを出したなんて知れたらまずい。
だが、私が疑われるのも嫌だ。
管理会社から電話で調査が入った場合、針金さんからしたら、真っ先に私のことを疑うだろう。
どうしたら、いい?
必死に考えるけれど、良い案が浮かばない。だが、ここはペット禁止なのは確か。
もう、成り行きに任せるしかない。


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