母と娘と私のランチ

寿司 家族
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 春休みなので、実母と子と3人でランチをした。
実家に行くことも考えたのだけれど、母は外で気分転換をしたいと言ったからだ。
子と父をたまには会わせたかったのだが、残念ながら父は病院。
私も明日と明後日はパートの面接があるから予定が合わなかった。
それに、もう子の春休みも終わる。


 互いの家から中間地点の駅で待ち合わせ。
母は時間前に来ていた。
それなりに大きな駅なので、モール内の飲食店も充実している。


「お寿司、食べたい。」


 子は遠慮なく言う。
たまにだしー、と財布の中に入れて来た1万円札を頭に浮かべた。
パートは退職したが、最後の給与の振り込みが今月末にある。


「私はあんまりお腹すいてないから、花子、たくさん食べなさい。」


 珍しく、母が遠慮がちに言う。
互いの近況報告の前に、祖母らしく子の高校生活を尋ねる。


「クラス替えですべて決まるからさ。」


 子のネガティブはおさまっていないようだ。
修学旅行も2年生は控えているので大事なのだと言う。


「大丈夫よ、花子なら。すぐに友達出来るから。」


 食欲が無いと言いつつ、うにやいくらを堪能する母。茶碗蒸しまでオーダー。
所謂、回転寿司-100円寿司は大嫌いな母なので、一皿300円以上する寿司屋なのだ。


「あんた、仕事はどうなのよ?」


 気まぐれに母が聞く。私が答える代わりに、子が答えた。


「ママ辞めたよ。いきなり。」


「え?なんで?じゃああんた、今無職?」


「そうだけど。今週は面接あるし、就活中だよ。」


「なんで辞めたの?頭使う仕事してたんじゃなかったっけ?ついていけなかった?」


 こういう核心を突くあたりが、親なのだ。


「シフトとか、色々思うところがあったから。カズヒロさんの仕事を手伝うのに融通が利くとこがいいなって。それが無理だったの。」


「ママ、大変そうだったしね。またちゃんとした会社で働くの?」


 子は、応援してくれていたのだ。あの作文を思い出す。私は子の理想の母親像から外れてしまうのだろうか。


「ちゃんとしたって、ばあば、ママの会社の名前なんて聞いたこともなかったわ。ちゃんとした名の知れた会社はね、体制がそもそもしっかりしてるからね。今度はそういうところ探しなさいよ。」


 母の時代と今は違う。
女性は腰掛けOL、男性社員の結婚相手候補だった時代。
今は能力が問われるのだ。ある意味フラットー、そして残酷。
女性は結婚と子育てによる変化に対応しながらも、求められるものは多くなっていく。


「私も自由だったら働きたいわ~あんたが羨ましいわよ。だって子どもだってもう大きいし自分のことだけ考えてりゃいいんだからね。」


 自由。
傍から見ればそうなのかもしれないけれど。
実際は、拘束されている。色々なものに。その中の一つには勿論、実家のことだってあるのだ。

私の話は軽く終わり、そこからはいつものように母の愚痴タイム。
子は、食事を終えてスマホを見る。イヤフォンまで付け始めたけれど、母は気にしない。
私がひたすら相槌を打つからだ。
愚痴は延々と続く。
大変だねって共感する。
よくやってるね、と労う。
そんな風に、私自身にも言い聞かせている。

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