盆休みといっても、子は既に夏休みだし夫も自営なので、カレンダー通りの休みに浮足立つこともない。むしろ、夫も子もそれぞれ会社や学校へ行き、私はパート休みというのが本当の休みでもある。
だが、親戚付き合いはそうもいかない。
今年の盆休み、義実家の集まりはどうするのか夫に聞くと、渋い顔をした。
義姉ー三女が鬱になっている現状、皆で集まって和気藹々というのもどうかと個人的には思ったからだ。だが、いつも通り、集まりはあると言う。
「普通に接してやらないと、変に気遣ったり腫物に触る方が病気が悪化するんだって。」
それに、義両親にとっては孫や息子、婿らが集まり賑やかに過ごすことで、最近の鬱々とした生活を送る日常から少しでも離れられる良い気分転換になるのだと言うのだ。
正直、お流れになるかと期待していただけに残念。
三女はそもそも苦手なのに、鬱病である彼女を前に私はどう振舞えば良いのか、思い悩む。
そんな折、弟から電話があり、また金の無心をされた。
私の現状ー、パート代が今は少なく無理だと断ると、1万でもいいからとしつこい。
転職し、有名企業の下請け会社でうまくやっているのかと思いきや、先月辞めたという。
母にはまだ伝えておらず、折を見てということだ。
弟なりに、母がこの仕事に就いたことを大層喜んでいたことに後ろめたさがあるのだろう。
「面倒な仕事ばっか回されて、新人だからっていいように使われてさ。やってらんねーよ。あんなとこ。」
よくよく聞けば、上司が20代で、偉そうにコキ使って来たのが気に食わなかったらしい。
年上なんだからもっと敬えーとまでは言わないが、それでも年上に対する物言いではないその上からな感じに腹が立ったのだと言う。
立派な職歴もキャリアもないのに、プライドだけはある弟。使えない氷河期世代がここにもう一人存在するのだ。
だが、私が独身で男に生まれていたら、弟のようになっていたかもーと思うと、少しだけ不憫にも思うのだった。
「一万でも貸してなんて、少しも貯金しなかったの?」
つい咎めてしまう。いくら独身で実家暮らしといっても、家賃だって食費だって掛からないのにいったいこの数か月分の給料を何に使ったのか?
「また、パチンコ?」
「いや、仕事のストレスが半端なくてさ。少しでも現実逃避しないと鬱病になりそうだったし。」
義姉に続いて実弟まで病気になったらと思うとぞっとした。
なんだか騙されている気もするが、渋々、お金については盆くらいに用立てすると伝えた。
「早く、バイトでもなんでも決めなさいよ。取り敢えず、無職期間だけは長引かせないで。」
「分かった、分かった。」
この軽い感じにイラっとするが、現状、両親と暮らし面倒を見てくれている弟に助かっている部分もある。病院の送迎や買い物など、やはり親の体調が悪い時には動いてくれているからだ。
実際、弟がいなければ、何かしらのサービスを受けなければならないことだってある。
その代金だと思えば、1万円は決して高いとも言えないのだった。