今週に入ってから、中山さんから直接振られる仕事がない。
再び、小川さんからの仕事を頼まれ、なんだか気まずい時間を過ごしている。
例の、先週におかしくしてしまったExcelの件だけれど、週明けに恐る恐るそれを開くとそのままだった。
中山さんが終日外出の日だったこともあり、小川さんに助けを求めた。
「あぁ、大丈夫ですよ。これはこうやって・・」
神業。
何がどうしたら復活したのか分からないけれど、彼女はものの5分で削除してしまったシートを削除前の状態に戻したのだ。
そして今日、どっさりたまった未開封の封筒を開けて、それを内容ごとに分別し、3種類のトレイに置くーというある意味単純作業を彼女から頼まれた。
こういう作業を私は求めているのだ。
よく分からない、専門的なデータ作成。胃のきりきりするような作業。そういう仕事が続くのならもうこの職場は潮時かもーと思っていたのだけれど。
ハサミで開封しようとしていたら、
「カッターの方が、やりやすいですよ。」
小川さんがデスクから取り出し、貸してくれた。
確かに、カッターの方がサクサク封を開封出来る。
ただ、カッターの刃が少し錆びついているからなのか、時折ひっかかりがあり、そんな時は思い切り力ずくでやってしまう。
「あ!」
思わず声が出た。
その拍子に、中山さんがこちらをちらっと見たようだが、すぐにPCに顔を向けてまるで私と関わるのは御免だというようにカタカタキーボードを打ち始める。
やってしまった。
恐る恐る中身を取り出すと、中身の用紙までざっくり割いてしまったのだ。
用紙を開くと、何かの契約書のようなもので、これはまずいかもーと焦る。
テープのりで後ろから貼り付ければ誤魔化せるか?と思うのだけれど、そもそも契約書をそんな風に勝手に細工したらまずいのでは?と自分の常識と世間の常識を照らし合わせる。
やはり、勝手は良くない。迷った末、小川さんに報告した。
「これは・・ちょっとまずいですね。」
そこまで深刻に捉えていなかったのだけれど、彼女の表情が曇るのを見たらやってしまったーと落ち込んだ。
なんてことだ、私ってやつは。
単純作業だからと舐めてかかっていたバチが当たったのだ。
「いいですよ、これは預かっておくので。」
小川さんは、相変わらずの神対応なのだった。
それがますます申し訳ない気持ちにさせられる。
こんな雑用すらまともに出来ない自分に嫌気がさすのだ。
そして、隣にいる中山さんと業務が無ければ会話ゼロの状態が、ストレスが減るどころか増している現実に、やっぱりここは私の居場所ではない、そう思う。