ハブられ認定

バインダー 仕事
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 寝坊した。
出勤日だったのに、生理前ということもあり体が重く睡眠も浅かったので、明け方いったん目が覚めて二度寝してしまったのが運のツキ。
大慌てで朝の準備をし、今日に限ってはパンのみの朝食。昼も作る時間が無かったので子にお金を持たせた。

「パンじゃ力出ないんだよな。」

 夫はぶつくさ文句を言っていたが、洗濯だけは干したかったのでスルーして一人バタバタしていたら静かになった。
食器洗いや掃除はせずにそのまま出た。

 職場にギリギリセーフで到着。
既に、花山さんらはデスクにいて、なので挨拶をした。

「おはようございます!!」

 息を切らしながら、声を掛けたが反応薄。

「・・ざいます」

 いつも元気にぶりっ子気味に挨拶をする彼女なのに、スマホから目を離さずそっけない態度。週が明けても先日の塩対応加減は変わらなかった。
不安になりつつも、今日は特に急ぎの仕事が無かったので誰も手をつけないファイリングをひたすらやった。
2枚以上ある請求書などはホチキス止めし、パンチで穴を空けてファイル。こういった単純作業が私には合っている。書類の保管場に殆どおり、席を外すことになった。

「ファイリングして来ますね。何かあったら呼んで下さい。」

 一応、木佐貫さんにはそう伝えた。
3時間、ずっとファイリング。
隣の席の花山さんとは気まずいし、むしろこの方が良かった。
だいぶたまっていた書類はスッキリし、今度はシュレッダー。
フロア中に音が鳴り響くので、社員が打ち合わせ中に限る。フロアにはパートの私と花山さんの二人きりになったが、やはり向こうから話し掛けて来ることはない。なんとなく花山さんの様子を伺うが、PCにかじりついておりその表情は見えなかった。
しん・・と静まり返った部屋の中、シュレッダーの音だけが響いていた。
黒川さんがいてくれたらちょっとは違ったのに。

 退勤時間になり、デスクに戻る。
花山さんは、一人で外にでも出るのかと思ったら、突然立ち上がり米田さんの席へ。

「お昼、一緒にいいですかぁ~?」

 米田さんは、少し驚いた感じだったけれど、

「あ、いいですよ。じゃあちょっと待ってて下さい。これ終わったら・・」

「じゃあトイレで待ってまーす。」

「あ、私もトイレ。」

 木佐貫さんが続く。
え?どういうこと?毛穴から、嫌な汗が噴き出る。花山さん、何考えているのか分からない。
あんなに米田さん達の悪口言って、しかもここずっと一緒にランチなんてしてなかった癖に。

「お先に失礼します・・」

 米田さんにおずおず挨拶をすると、PCから顔もあげずに、

「お疲れ様でーす。」


 嫌な感じに返された。
嫌な感じというのは、言葉ではなくニュアンス。覇気の無い、面倒臭そうで人を下に見るような感じの口調。
花山さんにランチを誘われた時の、ちょっと動揺しつつも対等な関係性ではない風な。

 自宅に戻り、妄想は続く。
もうこれは、ハブられ認定が降りたということ?
今度は、ランチで私の悪口を言ったりしてないよね?
彼女のことが、信用出来ない。

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