夫婦2人で義実家訪問。
到着すると、玄関にはずらっと靴が。それを目にしただけで気が重くなる。
夫はとっておきの酒を手に、私はお年賀のお菓子を手に。
「明けましておめでとうございます。」
既に、私達以外全員揃っており、食卓には豪華なお節など。今年もお取り寄せらしく、その他子ども達が好きそうなケンタッキーやらの揚げ物、ローストビーフなどなど。
子以外の孫たちも勢揃い。二つのテーブルは、大人達と子ども達とこれまで別れていたのだけれど、今年は大人達のテーブルに長女のところの娘だけでなく息子が座っていた。医学部に進んだ息子はまだ学生だけれどれっきとした大人だからだろう。
夫が空いている椅子に早々に着席し、私の席が無い。
「あ、ごめんなさいね。あっちでもいい?」
長女に促され、子どもテーブル側に着席するしかなかった。大人達のテーブルは夫がなんとか座れるスペースしかなかったからだ。
若干、二つのテーブルは離れており、子ども達が小さい頃は大人は大人でゆっくり食事や酒を楽しみ、子どもは食事をしたらゲームなどに興じつつといった感じだったけれど、今ではもう一番幼い孫は子より二つ下のあいちゃんだけ。小さな子どもテーブルには、長女のところの一番下の息子、それにあいちゃんとその兄、本当なら子が座る予定だったところに私といった風になった。
長女の一番下の息子と次女の上の息子は同学年なので、仲良くスマホを見ながら内輪の会話をしており、あいちゃんは正面に座る私にちょっと気まずそうに会釈をした。
義父が正月の挨拶をし、乾杯を夫がし、それから皆でワイワイと食事が始まった。私の出番といえば皆が食べ終わった頃に片付けーなのだけれど、今年は早々に帰宅する流れなので、なんだか具合が悪い。向こうのテーブルの会話には入れない距離で、だから一人、黙々と食事をするしかなかった。
ふっと自分の目の前に取り分け皿は置かれているものの、グラスも何もない。あいちゃん達はジュースを飲んでいる。こういう時、勝手に義実家の冷蔵庫を開ける訳にもいかず、お茶を下さいと言える空気もなく、だから私は水分を食事から摂るしかなかった。
一度だけ、遠くに座る義母に声を掛けられた。
「ちゃんと食べてる?こちらにお肉とかあるから、取りに来てね。」
「ありがとうございます。」
とはいえ、ローストビーフなど豪華な料理の殆どは、夫や娘婿の席前にどーんと置かれ、そこに割り入りいただくことは気が引けた。なので、子どもテーブルの上にあるケンタッキーチキンをひとつに大人テーブルの端っこに置かれたお節を数種類(なますや昆布巻き、黒豆、かまぼこなど)栗きんとんはあいちゃんが大好物らしいので手を付けず、そういった地味目なものをちびちび時間を掛けて摘まんだ。
甥っ子達は、私の分からないゲームの話をしているのであいちゃんに時々話し掛けた。
どうしても、話題はピアノのことになる。あいちゃん自体は自分の才能を鼻に掛けることもなく気持ちの良い子なので、叔母の私が話し掛ければそれなりに礼儀正しく答えてくれる。母親とは違い、謙虚なのだ。
しかし会話はそこまで弾まず、あいちゃんも気まずいのか時々兄や従兄弟のゲーム画面を覗いて茶々を入れたり、そうこうするうちに次女に呼ばれて大人テーブルへ行ってしまった。
話し相手がいなくなった私は、手持無沙汰に自分のスマホを取り出す。喉は相変わらずカラカラに乾いていた。早く水かお茶を飲みたい。子に、昼は食べたか?とラインを送るが未読スルー。
やはり、元旦に家に一人残して来た娘のことが気掛かりだった。
「ちょっと、そろそろ帰るね。」
すっかり酔って大笑いしている夫に声を掛けると、長女が、
「え?もう帰るの!?」
別に、私がいてもいなくてもどうでもいいだろうに、驚いた風な声をあげた。
三女も、気を許した家族の集まりだからか、病み上がりとは思えないくらいに陽気に笑い、食べて飲んで、次女もケラケラ何がおかしいのか腹を抱えて笑っている。
皆、飲んで食べて笑ってーその輪の外で、しかも半分は血縁である我が子がいないこの場で私は、「赤の他人」に他ならない。
「では、お先に失礼します。お邪魔しました。」
「花子によろしくねー!」
バラバラと、どうでも良さそうな声を背中に受けつつ義実家を後にした。
待ちきれず、近くの自販機で130円の水を買い、ぐびっと一気飲み。もうすぐ先にスーパーがあり、そこで水を買えば100円もせずに買えるのは分かっていたが、生理的なものなのか精神的なものなのか、どうにもならないこの乾きを一刻も早く潤す必要があった。
