自己投資

テキスト わたし
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 新年を迎え、やる気スイッチが入ったことで簿記の勉強を再開することにした。
メルカリでテキストや問題集を売り払ってしまったけれど、合格を目指すには新しいテキストの方が良いとされる。年度によって出題内容の変更があるからだ。
ランキングで一位のテキストは1200円程度。これで自己投資出来るのなら安いものだ。
事務パートの帰りに本屋に寄り購入したのだけれど、その日は業務中も頭は簿記で一杯だった。
相変わらずやることが乏しく、請求書をコピーし穴あけしたりファイルに綴じたりの雑用をしながら、私はいずれこの職場を出て行くのだと自分を慰めることに役立った。
経理的な仕事を既に任されている黒川さんだが、前職も経理畑にいたのだろう、米田さんから発せられる聞き慣れない言葉に対してもすんなり返し、サクサク仕事を進めていた。

「黒ちゃん、何学部だったの?」

 木佐貫さんが聞けば、商学部だったらしい。なので簿記も2級を取得しており、更に宅建の資格も持っているとかなんとか。国立大卒だから出来る人だと思っていたけれど、聞かれたから答えたのであろう経歴は、かなり立派だ。なのになぜ、社員にならずこんなところでパートをしているのかが謎ではあるけれど。

「簿記、持ってるんだね~私、3級は持ってるけど、あんま意味なかった。やっぱり2級からだよね。」

 これから私が取得しようと奮起した資格をあっけなく「無意味な資格」に位置付ける木佐貫さんに苛ついた。いや、彼女にとって意味がなかっただけ。私にとっては、大袈裟だが人生を変える資格になるかもしれないのだ。

 花山さんは、PCに強い。ちゃらんぽらんに見えて、だが新しい業務についての飲み込みも早い。私だけが何の取り柄もなく、雑用ばかりのおばさんだ。
でも、諦めたらそれまでだ。今度こそ、頑張ろう。
真新しいテキストを開くと、窓から太陽の光が差し込み、頁を照らした。

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