よそ者

ボール 仕事
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 「このデータを振り分けて、それが終わったらチェックして下さい。それから、今年度の書類ですが、ファイルに綴じて書庫に保管するのでラベリングお願いしますね。」

 出社するなり、小川さんからあれこれ作業を頼まれ、求められているーという錯覚に陥る。
やることはすべてが単純作業。この9か月、振られた数々の作業の中ではマニュアルを使わず出来る、唯一、私の好きな作業。
こういう種の作業がもっとあれば、続けられたかもしれない。
ただ、これは季節的な業務で年度末ということもあり増加しているにすぎず、普段はぽつぽつ数件あるかないかのもの。
小川さんは、私が年度末で退職することになった話を聞いているのだろうか?
勤務中だし、プライベートな会話をする空気ではなく、ただ彼女の指示に従うのみ。
しかし、あれだけお世話になったのだから、いち早く伝えたい。
トイレへ立つ彼女のタイミングに合わせ、私も席を立った。
しかし、彼女は別部署の誰かとトイレ前で話しており、会釈し通り過ぎるだけに終わった。

隣に座る中山さんとは会話らしい会話をしていない。
ただ、視線はちょくちょく感じ、不快感。
そんな大嫌いな中山さんのデスクにちょいちょい来ては、作業の成果物を提出する派遣さんは、この職場で自分の能力を発揮し、皆から必要とされている。

かろうじてやることはあるけれど、もうここで私は「よそ者」だ。
退職日は、皆に挨拶するのだろうか。今はそれがとても憂鬱だ。


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隣の芝生
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