子が小さい頃は、笹を用意して飾りや短冊を作り、家の中で七夕をした。
当たり前だけれど、高校生になった娘一人の家に、もうそういったイベントなど存在しない。
それをふと、寂しく思う。
冷蔵庫の中、ろくなものが無いことに気付き買い物に出た。
遠くで雷の音が聞こえたので、急いで店に入り、事前に決めている商品をかごに入れる。
週末だし、今週は頑張ったしーと、ご褒美にスイーツも買った。
働くようになり、夫もこれくらいの贅沢は大目にみてくれるだろう。
落ち込んでいる夫に、ビールも買った。
店の出入り口に、大きな笹とテーブルの上に短冊とペン。
人がたくさんいたので、私も紛れ込み黄色い短冊を手に取る。
ー私らしく笑える場所に出会えますようにー
家族のことではない、自分のこと。
これくらいの我儘、いいでしょう?と誰かに見られているような気になり呟く。
子はもうすぐ自立する。
夫とはどうなるか分からない。
私は、私の残り少ない人生を笑顔で過ごしたい。
その為には、日々のんべんだらりと過ごしてはいられない。
これからが頑張り時。
少しずつ、慣れてきたらペースアップ。
今は、新しい職場でがむしゃらに頑張ること。目の前にある課題に精一杯取り組もう。
買い物から帰宅すると、ふらりと外に出ていた夫は既に家の中にいた。
せっかく茹でた素麺、勿体ないので夕飯に汁物としてにゅう麺として出したが文句は無かった。
さり気なく、夫好物の刺身の盛り合わせと肉じゃがのメニューだったからなのかもしれないけれど。
夫は今、短冊にどんな願いを書くのだろう。
聞いてみたい気もしたが、予想はつく。
ただ一つ、願うことは年に一度だけじゃない、何度でも、何度でも。
私達はいつだって、希望を持ち続けていい。