「定期、落とした。」
突然、子からそう告げられて返す言葉も無かった。
新学期になり、購入したばかりの定期券なのだ。
半年分で金額にすると1万円以上~で、+コンビニでお茶やパンを買う時の為、何かあった時の為にと5千円チャージしたばかり。
「ちゃんとバッグの中とか見てみて!家の中も!あと、駅員さんに伝えた!?」
「え?してないけど。」
慌てる私をよそに、他人事な感じの子。
落として悪用されたり、またチャージ金を使われてしまう。
すぐに必要書類を調べ、子に駅まで手続きをしに行かせた。
無事に手続きを済ませたと子からラインが入る。
再発行が出来るということとチャージ残高が保証されるということで胸を撫でおろす。
即日再発行は無理で、2週間以内に受取りに行かなくてはならないので注意が必要。
デポジットと再発行の料金は損したけれど、2万円弱が戻るのは大きい。
「あ、チャージのお金、頂戴。」
「え?この間、5千円渡したよね!?」
「それ、チャージするの忘れてて、カードケースに入れっぱなしだったんだよね。」
ーはぁ!?
つまり、カードケースごと定期券を紛失した子だが、チャージ予定の五千円札はパァになったということ。
保障されるのは、定期券とチャージ分だけだから。
すぐにチャージしていたら、その五千円だって保障されていたというのに。
必死でやり繰りしている母の心など子知らず。
涼しい顔をしている子に苛立ちが募る。
「もう高校生なんだから、失くした責任は自分で取って!小遣いから何とかしなさい。」
「えー。そんな・・」
自分の財布が痛い目に合えば、二度と紛失しないよう気を付けるだろう。
心を鬼にし、子に背を向けた。
私もパート代の半分は家計に回すようになった。
お金の有難みー、それは、自分の労力の対価によって得られることを知れば更に痛感するのだ。