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ケータリング 仕事
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 職場の社内ツールの中にある「掲示板」が更新されていた。
クリックすると、創業周年パーティー開催のお知らせ。
都内のホテルで行われるのだが、パートの私は参加するのかしないのか。
まだはっきりしていないけれど、出来れば参加したくない。

 従業員も少ないし、創業といってもまだまだ短い。
社長も若いし、社員も若い。
それでも、こうした催しをきちんとするような職場に勤めたことが無い私にとっては、未知の世界。
もし、パートでも参加を要請されたなら、どんな服装で行けばいいのか?リクルートスーツ?
それに、和気藹々と参加している社員に混じり、場違いではないか?
ただひたすら黙々と食事をしている自分の姿が浮かぶ。
やっぱり、気が重い。


 夫の以前の職場でも、創業周年祝賀会はあった。
妻参加を求められる場面もあったけれど、まだ子が小さ過ぎたこともあり免除された。
やっぱり、パーティーは苦手。
どうしたって壁の花になってしまう。
特に立食パーティーなんて、皿を持ってふらふら一人で彷徨うしかないだろう自分を想像すると本当に憂鬱だ。
式典が行われた後は別会場で立食パーティーが予定されており、半日以上を費やすことになりそうだ。


 来年度から入社する大学生が、ここ最近はバイトとして仕事をしに来ている。
戸田君というのだけれど、ちょっと挙動不審な子。
彼の席は、私の真後ろ。
私達の背中にある島なので直接の関わり合いは無いけれど、背後からボソボソ彼の独り言が聞こえることもあり、なんだか気になってしまう。
皆、テキパキと動くこの職場では異色な感じ。
大学は誰もが知る有名大学なのだけれどー、私が言うのもなんだけれど少しコミュ障気味のようで、おどおどしながら質問をしていたりする。


「え?何?ちょ、何言ってるか分からないよ。もう一回言って!」


 少し吃音もあるのか、緊張からそうなってしまうのか、彼の言葉は聞き取り辛い。


「うわ!びっくりした。そんなとこに突っ立ってたら危ないよ。ちゃんと声掛けてよ。」


 質問をするタイミングがつかめないのか、先輩社員の背後に亡霊のように立っていたりする。
気の毒に思いながらも、その一方で安心している自分もいる。
私だけじゃないーという安心感。
彼は私のことなんてまったく眼中にないだろうし、ただのパートのおばさんだと思っているだろうけれど、勝手に仲間意識を抱いている。
彼がパーティーに参加するなら、行ってもいいかなーなんて思うくらいなのだ。

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